目の前には高い塀。そして大きな門。粛々とした大きな屋敷は、いつ来ても少し緊張する。
「って、ウチやんけ」
「はい」
「おっさんたちのこと気遣ったんならえかったのに。俺が好きで、あおいちゃんに声かけたんやから」
「それがないわけじゃないですけど、用事があったのは本当ですよ」
どこからか嗅ぎ付けたのだろう。屋敷の奥から、足音が聞こえてくる。
「シオンさんに、お届け物があるので」
紙袋から出した、綺麗に包装された箱。そして、少し分厚めの封筒の中には写真と、“愛してる”のメッセージカード。
それを見せると、彼は「おおきにな」と。少し眉尻を下げて笑った。
――――――…………
――――……
「ご迷惑でしたか?」
「ん? 何がや」
送ってもらっている車の中。先程の笑顔がどうしても気になって、わたしは遠慮がちに聞いてみた。
「その、マサキさんの貴重な時間を戴いてしまうこともそうですけど」
「……」
「急に、組にお邪魔してしまって」
「いや、ちゃうねん」
赤信号で止まった瞬間、勢いよくハンドルに突っ伏した彼にビクリと体を震わせる。お仕事後でお疲れなのか。今日は随分と感情が表に表れるようだ。
「葵ちゃんには申し訳ないけど、こういうことはもうやめて欲しいねん」
「こういうこと……アッシーくんですか?」
「わかっとるんやろ。組に来ることをや」
「ほう」
信号が青に変わり車は動き出したが、その後マサキさんはなかなか続きを口に出さない。痺れを切らし、わたしは彼に問う。
「ご迷惑ではないんですよね?」
「……」
「でもわたしが来ることで、マサキさんの中でちょっとモヤモヤしたものが湧いてくるんですよね?」
「……」
「はっきり言ってくださって大丈夫ですよ。多分マサキさん、今言わないともう絶対言ってくれないから」
「……せやな」
「口滑らしてしもたって、今ちょっと反省しとったのに」と、目的地の側まで来た彼は、静かに車を止めた。
「葵ちゃんには感謝しとる。橋渡し的なこと、ずっとしてくれてんやから」
「わたしが好きでやってることですよ」
「せやけど、あんまこういうのはよくないと思うんや俺は」
「……どうしてですか?」
「あんたと俺らは、本来一緒におったらいかんねん。せやから、紫苑さんと沙羅さんは今別々のところにおる。そうやろ」
「……そうですね」
「わかってくれたならええねんや」と、再び車を走らせようと彼はしたけれど、わたしはそのまま助手席から降りた。
「怒らせてしもたか。悪いな。けど本心や」
「え? いえいえいえ、怒ってませんよ。わたしも、マサキさんの考え方にはどちらかというと賛成派です」



