郵送をした分は、皇の二人用。朝日向という立場上、まあ建前として。だから、友人として。家柄も立場も関係なくどうにか渡せないものかと思っていた。
《アオイちゃんに会えるからって
当日は仕事もオフにしてたけど
シントの奴が勝手に言ってるだけなんだろ?
無理しなくていいからな》
〈いえいえ!
初めからそのつもりだったので〉
《そうか? なら
近くに来たら連絡入れてくれ
裏から出て迎えに行く》
〈ありがとうございます!
ではまた14日に〉
事前にカエデさんには連絡済み。サプライズで登場したわけだけど、「充電させて……」って、いきなり抱き付かれた時はどうしようかと。仕事をしたくないくらいには、いろいろ疲れていたらしい。やっぱり直接会いに来てよかった。
「シン兄が疲れてる原因は、多分俺だから」
「え? アキラくんが??」
寧ろ癒やしではないのだろうか。大好きな弟に構ってもらえてるんだから。
「俺が、まあいろいろ見繕ってあてがってるから」
「アキラくんも大変ですなあ」
「俺なんかよりよっぽどシン兄の方が大変だけどな」
「そんなことないよ。だって、自分の方だってあるでしょう」
ぐっと唇を内側に丸めて口を噤んだ彼は最近、前にも増して表情がとってもわかりやすい。この顔は図星だ。
「正直、今どうこうする気分じゃない」
「でも早くしないと素敵な人が他の人にもらわれちゃうかもよ?」
「葵基準で見るから、パスどころか引っ掛かってくれる人がいない。どうしてくれるんだ」
「……あれ。何故かわたしが責められておる……」
どうしたもんかと腕を組んで悩んでいると、隣から小さく噴き出した音が聞こえた。あのアキラくんが噴き出して笑うとな。明日は猛暑かな。
「だから、まあ焦ってない。ゆっくり長い目で見ていくつもり。俺の未来についても……皇の未来についても」
「……うんっ。お互い頑張ろうね!」
アキラくんに玄関まで送ってもらい、皇を後にする。
一度振り返った皇の屋敷を、じっと見上げた。
「皇を変える……か」
明確な意思と決意を持った彼らが進もうとしている道はとても真っ直ぐで、すごく綺麗だ。
「……わたしは?」
お互い頑張ろうと言った。それは本心だし、わたしも頑張らないといけないと思っている。
けれど、もしわたしが朝日向の跡を継ぐのなら。こんな気持ちのままでは、きっといけないだろう。甘いと、そう言われるだろう。
だったら、わたしはどうすればいいんだろう。わたしは、朝日向をどうしたいんだろう。



