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彼女の背中が小さくなっていくのを、じっと見つめる。それが曲がり角でふっと消える前に、一度こちらに手を振ってくれた彼女に俺も振り返して、家の中へと戻る。
リボンが紫色だったのは、何も意図してやったことじゃない。母が先程花屋から帰ってきたその花束を、結んでいたものだ。玄関の花瓶に生けるのだと、意気揚々としていた母は今、買い忘れがあったと再び花屋に駆けていったけれど。というか多分、そちらがメインだ。
もうすぐ、あいつらの誕生日だから。
「ただいまー! あれ? つばちゃんお花生けてくれたの?」
「生けた……というか、突っ込んだだけだけど」
それこそ、束になっていたままをそのまま。けれど、母は何故か嬉しそうに笑ってくれた。
「十分綺麗よ。ありがとう」
「……あのさ。この花束結んであったリボンなんだけど」
「うん?」
「使っちゃったんだけど、よかった?」
もちろんよ! 全然構わないわ!
そんな風に言ってくれるんだろうと、勝手に思っていたけれど。
「何に使ったの?」
母は、何かを確かめるように、じっと俺の瞳の中を覗いた。
「……何に、か」
いつだって、いつも心を決めてくれるのは彼女だった。彼女の声が、言葉が、手の平が、いつだって俺の背中を押してくれて。俺の心に、力をくれた。
「……強いて言うなら、断ちたくてかな」
でも、それじゃあ駄目だから。彼女ばかりに頼っているわけでもないし、俺自身が成長してないわけじゃない。
それでも俺は、俺の力だけで遣り遂げてみたいことがある。
「ふーん。断ちたくてかあ」
「……変?」
「うんっ!」
(実の母に変と即答される息子……)
「変っていうのは、変化を意味するのよ?」
「……母さん?」
「つばちゃん。今日は一段とイケメンさんね」
「……」
「大人記念に、美味しいご飯作りましょーね」
「……ありがとう」
「じゃあ、早速お支度するわ!」
「慌てると転けるよ」
それも、決して一人の力でできることではないけれど。誰かの、優しさと小さな心遣いを支えに、俺は一本の道を進んでいこう。
「……あ。もしもし、ご無沙汰しています。九条です。先日のことで少し、お伺いしたいことがあるんですけど――……」
目下俺の夢は、この紺色のリボンを結んでくれた彼女を一番に驚かせ、そして笑顔にさせること。まずはそこからだ。
彼女の背中が小さくなっていくのを、じっと見つめる。それが曲がり角でふっと消える前に、一度こちらに手を振ってくれた彼女に俺も振り返して、家の中へと戻る。
リボンが紫色だったのは、何も意図してやったことじゃない。母が先程花屋から帰ってきたその花束を、結んでいたものだ。玄関の花瓶に生けるのだと、意気揚々としていた母は今、買い忘れがあったと再び花屋に駆けていったけれど。というか多分、そちらがメインだ。
もうすぐ、あいつらの誕生日だから。
「ただいまー! あれ? つばちゃんお花生けてくれたの?」
「生けた……というか、突っ込んだだけだけど」
それこそ、束になっていたままをそのまま。けれど、母は何故か嬉しそうに笑ってくれた。
「十分綺麗よ。ありがとう」
「……あのさ。この花束結んであったリボンなんだけど」
「うん?」
「使っちゃったんだけど、よかった?」
もちろんよ! 全然構わないわ!
そんな風に言ってくれるんだろうと、勝手に思っていたけれど。
「何に使ったの?」
母は、何かを確かめるように、じっと俺の瞳の中を覗いた。
「……何に、か」
いつだって、いつも心を決めてくれるのは彼女だった。彼女の声が、言葉が、手の平が、いつだって俺の背中を押してくれて。俺の心に、力をくれた。
「……強いて言うなら、断ちたくてかな」
でも、それじゃあ駄目だから。彼女ばかりに頼っているわけでもないし、俺自身が成長してないわけじゃない。
それでも俺は、俺の力だけで遣り遂げてみたいことがある。
「ふーん。断ちたくてかあ」
「……変?」
「うんっ!」
(実の母に変と即答される息子……)
「変っていうのは、変化を意味するのよ?」
「……母さん?」
「つばちゃん。今日は一段とイケメンさんね」
「……」
「大人記念に、美味しいご飯作りましょーね」
「……ありがとう」
「じゃあ、早速お支度するわ!」
「慌てると転けるよ」
それも、決して一人の力でできることではないけれど。誰かの、優しさと小さな心遣いを支えに、俺は一本の道を進んでいこう。
「……あ。もしもし、ご無沙汰しています。九条です。先日のことで少し、お伺いしたいことがあるんですけど――……」
目下俺の夢は、この紺色のリボンを結んでくれた彼女を一番に驚かせ、そして笑顔にさせること。まずはそこからだ。



