❀ ❀ ❀
「ユズちゃんとキサちゃんのとこはお届け完了っと。そのついでと言っちゃうけど、カナデくんとキク先生の分も終了。両理事長へも、今さっき配達終了のメール届いたから……」
照合したところにチェックマークを書き入れて……っと。
「あ、もしもしお父さん? 届いた? よかったー! あ、それおじいちゃんとお母さんとミヤコさんと、あとアオバさんシノさんの分も入ってるから……え? アオバさんもう朝日向にいないの? なんてこった。わかった、新しい働き先がわかったらすぐ教えてねー」
アオバさんは三角のマークをひとまず入れておいて。朝日向も、無事届いたみたいだから、チェックチェック。
「……なるべくなら、直接渡したかったんだけど」
アカネくんは、今日は一日美大に泊まりがけで、一足早くにもらった入学課題を仕上げに行っているらしい。今日は帰ってこないかもということで、ご家族の方にお願いをしておいた。
二年生のみんなも今日は学校。一日逃げて、その後残って生徒会の作業とかするってなったら、やぱり今日中に全員には配れそうにない。
「ということで、本日の行動ルート途中にお家を発見した場合、アカネくん方式でいかせていただきます。許せ友よ」
ひとまずは、ちゃんと手渡しできそうなところから。
「はーい、どちら様で」
「ハッピーバレンタイン!」
「……本命?」
「残念ながら友チョコさんだ」
「本命じゃねえともらわねえよ」
「じゃあ口開けて? 無理矢理食べさすから」
「お前ならマジでやりかねないから怖いんだって」と、彼は酷く疲れた顔で肩を落とした。なんて失礼な。まあ、しろと言われればするけれども。
「……上がる?」
「ううん。今日はここで。まだ今から行くところがあるんだ」
「それは本気で残念」と、彼は、手に持っていたそれをわたしの左手首に結び始める。…言ってないんだけど、来ること。何か察知してたのかな、いろいろ。
「色もちょうどいいな」
紫――それは、独占欲の表れ。
「コメントに困る」
「困らせてんだからいいんだよ」
「困らせないでよー」
「振られても勝手に思うくらいはいいだろ」
うん。多分来ると思ってたな、わたしが。
忙しいわけを粗方説明して、道中ならお話ができるよと。ツバサくんをお散歩に誘ったのだけれど。
「あー……すっげえ魅力的だけどやめとく」
「あれま、そうなのか」
「それ結べただけで満足だし。罪悪感がないわけじゃないし。ちょっと後が怖そうなのも自覚してるし」
「そうか。でもそのとばっちりはこっちにも飛んでくるんだよね。どうしてくれようか」
「あと、俺にもいろいろやることあるし」
「やること? いろいろ?」
だいぶざっくりとした、ふわふわした感じをちらつかされたら、気になって仕方がないのだけれども。
けれど、表に出てくるものもそんな感じなのだ。どうやら、彼の中にあるものも、まだきちんとした形を成していないらしい。
「またいつか、教えてくれる?」
「もちろん。一番に教えに行くよ」
それでも。わたしを見つめる瞳はとても真っ直ぐで、一つもぶれないその視線は、彼の決意の表れだろう。
わたしは、鞄の中から取り出した紺色のリボンを彼の左手首に結んだ。
「いつか、君の夢が叶いますように」
そしてわたしが、彼の背中を押してあげられますように。そんな願いを込めて――。
「ユズちゃんとキサちゃんのとこはお届け完了っと。そのついでと言っちゃうけど、カナデくんとキク先生の分も終了。両理事長へも、今さっき配達終了のメール届いたから……」
照合したところにチェックマークを書き入れて……っと。
「あ、もしもしお父さん? 届いた? よかったー! あ、それおじいちゃんとお母さんとミヤコさんと、あとアオバさんシノさんの分も入ってるから……え? アオバさんもう朝日向にいないの? なんてこった。わかった、新しい働き先がわかったらすぐ教えてねー」
アオバさんは三角のマークをひとまず入れておいて。朝日向も、無事届いたみたいだから、チェックチェック。
「……なるべくなら、直接渡したかったんだけど」
アカネくんは、今日は一日美大に泊まりがけで、一足早くにもらった入学課題を仕上げに行っているらしい。今日は帰ってこないかもということで、ご家族の方にお願いをしておいた。
二年生のみんなも今日は学校。一日逃げて、その後残って生徒会の作業とかするってなったら、やぱり今日中に全員には配れそうにない。
「ということで、本日の行動ルート途中にお家を発見した場合、アカネくん方式でいかせていただきます。許せ友よ」
ひとまずは、ちゃんと手渡しできそうなところから。
「はーい、どちら様で」
「ハッピーバレンタイン!」
「……本命?」
「残念ながら友チョコさんだ」
「本命じゃねえともらわねえよ」
「じゃあ口開けて? 無理矢理食べさすから」
「お前ならマジでやりかねないから怖いんだって」と、彼は酷く疲れた顔で肩を落とした。なんて失礼な。まあ、しろと言われればするけれども。
「……上がる?」
「ううん。今日はここで。まだ今から行くところがあるんだ」
「それは本気で残念」と、彼は、手に持っていたそれをわたしの左手首に結び始める。…言ってないんだけど、来ること。何か察知してたのかな、いろいろ。
「色もちょうどいいな」
紫――それは、独占欲の表れ。
「コメントに困る」
「困らせてんだからいいんだよ」
「困らせないでよー」
「振られても勝手に思うくらいはいいだろ」
うん。多分来ると思ってたな、わたしが。
忙しいわけを粗方説明して、道中ならお話ができるよと。ツバサくんをお散歩に誘ったのだけれど。
「あー……すっげえ魅力的だけどやめとく」
「あれま、そうなのか」
「それ結べただけで満足だし。罪悪感がないわけじゃないし。ちょっと後が怖そうなのも自覚してるし」
「そうか。でもそのとばっちりはこっちにも飛んでくるんだよね。どうしてくれようか」
「あと、俺にもいろいろやることあるし」
「やること? いろいろ?」
だいぶざっくりとした、ふわふわした感じをちらつかされたら、気になって仕方がないのだけれども。
けれど、表に出てくるものもそんな感じなのだ。どうやら、彼の中にあるものも、まだきちんとした形を成していないらしい。
「またいつか、教えてくれる?」
「もちろん。一番に教えに行くよ」
それでも。わたしを見つめる瞳はとても真っ直ぐで、一つもぶれないその視線は、彼の決意の表れだろう。
わたしは、鞄の中から取り出した紺色のリボンを彼の左手首に結んだ。
「いつか、君の夢が叶いますように」
そしてわたしが、彼の背中を押してあげられますように。そんな願いを込めて――。



