すべての花へそして君へ③

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「ユズちゃんとキサちゃんのとこはお届け完了っと。そのついでと言っちゃうけど、カナデくんとキク先生の分も終了。両理事長へも、今さっき配達終了のメール届いたから……」


 照合したところにチェックマークを書き入れて……っと。


「あ、もしもしお父さん? 届いた? よかったー! あ、それおじいちゃんとお母さんとミヤコさんと、あとアオバさんシノさんの分も入ってるから……え? アオバさんもう朝日向にいないの? なんてこった。わかった、新しい働き先がわかったらすぐ教えてねー」


 アオバさんは三角のマークをひとまず入れておいて。朝日向も、無事届いたみたいだから、チェックチェック。


「……なるべくなら、直接渡したかったんだけど」


 アカネくんは、今日は一日美大に泊まりがけで、一足早くにもらった入学課題を仕上げに行っているらしい。今日は帰ってこないかもということで、ご家族の方にお願いをしておいた。
 二年生のみんなも今日は学校。一日逃げて、その後残って生徒会の作業とかするってなったら、やぱり今日中に全員には配れそうにない。


「ということで、本日の行動ルート途中にお家を発見した場合、アカネくん方式でいかせていただきます。許せ友よ」


 ひとまずは、ちゃんと手渡しできそうなところから。


「はーい、どちら様で」

「ハッピーバレンタイン!」

「……本命?」

「残念ながら友チョコさんだ」

「本命じゃねえともらわねえよ」

「じゃあ口開けて? 無理矢理食べさすから」


「お前ならマジでやりかねないから怖いんだって」と、彼は酷く疲れた顔で肩を落とした。なんて失礼な。まあ、しろと言われればするけれども。


「……上がる?」

「ううん。今日はここで。まだ今から行くところがあるんだ」


「それは本気で残念」と、彼は、手に持っていたそれをわたしの左手首に結び始める。…言ってないんだけど、来ること。何か察知してたのかな、いろいろ。


「色もちょうどいいな」


 紫――それは、独占欲の表れ。


「コメントに困る」

「困らせてんだからいいんだよ」

「困らせないでよー」

「振られても勝手に思うくらいはいいだろ」


 うん。多分来ると思ってたな、わたしが。
 忙しいわけを粗方説明して、道中ならお話ができるよと。ツバサくんをお散歩に誘ったのだけれど。


「あー……すっげえ魅力的だけどやめとく」

「あれま、そうなのか」

「それ結べただけで満足だし。罪悪感がないわけじゃないし。ちょっと後が怖そうなのも自覚してるし」

「そうか。でもそのとばっちりはこっちにも飛んでくるんだよね。どうしてくれようか」

「あと、俺にもいろいろやることあるし」

「やること? いろいろ?」


 だいぶざっくりとした、ふわふわした感じをちらつかされたら、気になって仕方がないのだけれども。
 けれど、表に出てくるものもそんな感じなのだ。どうやら、彼の中にあるものも、まだきちんとした形を成していないらしい。


「またいつか、教えてくれる?」

「もちろん。一番に教えに行くよ」


 それでも。わたしを見つめる瞳はとても真っ直ぐで、一つもぶれないその視線は、彼の決意の表れだろう。
 わたしは、鞄の中から取り出した紺色のリボンを彼の左手首に結んだ。


「いつか、君の夢が叶いますように」


 そしてわたしが、彼の背中を押してあげられますように。そんな願いを込めて――。