『いいや、可笑しいんだ。たかが箱一つに、何故こんなにも紐を巻かねばならない。解くこちらの身にもなって欲しいものだ』
そして黄色は、勇気の証。どうやら葵ちゃんは、そんなおじさんとお友達になりたいようだけれど。その当のおじさんは、あなたが笑顔で結んだであろうリボンを、解くので忙しいようです。
今度会った時にこっそり伝えておこう。おじさんは、あなたのお友達になりたいと言っていたと。
『しかも包装紙には、これ見よがし結んだ紐が描かれているし』
「ちなみに、そのリボンの色は何色ですか?」
『あ? 全部水色だが』
「……」
『それがどうした』
「あはは! もう、葵ちゃんってばっ」
水――それは、言動への改めを示す色。つまり、水でもかぶって反省しなさいと。どうやら私を思っていろいろ伝えてくれたらしい。ま、当の本人にはイマイチ伝わってはいないけれど。
『……おい。何がそんなに可笑しい』
「電話、いただけて嬉しかったです」
『……』
「十分。……十分、うれしいです。ありがとう、あなた」
ありがとう、葵ちゃん。ホワイトデーは、とっても素敵なものを考えておかなくっちゃ。
「忙しい合間を縫って、お電話くださってありがとうございました。そろそろ切りますね」
『何故』
「え? 何故って……」
『今、一つ大きな仕事が独り立ちして出て行ったんだ』
「……そう、ですね?」
『正直なところ手持ち無沙汰でな』
普段なら、その空いた時間さえも惜しいと。他の仕事に回していたというのに。今日の彼は、やはり少し可笑しいらしい。
「……あの、無理にとは」
『ああ。だから無理にとは言わない』
「え。ちょ、あなた?」
『久し振りに、会わないか』
「……」
『嫌か』
「嫌なわけありません」
『……そうか』
よかったと、小さく安堵する電話の声に、堪えきれなかった涙が、頬を伝った。
感謝してもしたりない。それでもきっと受け取ってはくれないだろうから……。
今度会ったら、伝えよう。私たち二人分の愛を。そして、尊敬の意を込めて、目一杯抱きしめよう。
私の、かけがえのない天使を――。



