すべての花へそして君へ③


『いいや、可笑しいんだ。たかが箱一つに、何故こんなにも紐を巻かねばならない。解くこちらの身にもなって欲しいものだ』


 そして黄色は、勇気の証。どうやら葵ちゃんは、そんなおじさんとお友達になりたいようだけれど。その当のおじさんは、あなたが笑顔で結んだであろうリボンを、解くので忙しいようです。
 今度会った時にこっそり伝えておこう。おじさんは、あなたのお友達になりたいと言っていたと。


『しかも包装紙には、これ見よがし結んだ紐が描かれているし』

「ちなみに、そのリボンの色は何色ですか?」

『あ? 全部水色だが』

「……」

『それがどうした』

「あはは! もう、葵ちゃんってばっ」


 水――それは、言動への改めを示す色。つまり、水でもかぶって反省しなさいと。どうやら私を思っていろいろ伝えてくれたらしい。ま、当の本人にはイマイチ伝わってはいないけれど。


『……おい。何がそんなに可笑しい』

「電話、いただけて嬉しかったです」

『……』

「十分。……十分、うれしいです。ありがとう、あなた」


 ありがとう、葵ちゃん。ホワイトデーは、とっても素敵なものを考えておかなくっちゃ。


「忙しい合間を縫って、お電話くださってありがとうございました。そろそろ切りますね」

『何故』

「え? 何故って……」

『今、一つ大きな仕事が独り立ちして出て行ったんだ』

「……そう、ですね?」

『正直なところ手持ち無沙汰でな』


 普段なら、その空いた時間さえも惜しいと。他の仕事に回していたというのに。今日の彼は、やはり少し可笑しいらしい。


「……あの、無理にとは」

『ああ。だから無理にとは言わない』

「え。ちょ、あなた?」

『久し振りに、会わないか』

「……」

『嫌か』

「嫌なわけありません」

『……そうか』


 よかったと、小さく安堵する電話の声に、堪えきれなかった涙が、頬を伝った。
 感謝してもしたりない。それでもきっと受け取ってはくれないだろうから……。

 今度会ったら、伝えよう。私たち二人分の愛を。そして、尊敬の意を込めて、目一杯抱きしめよう。

 私の、かけがえのない天使を――。