男が、五本目の煙草の火を消した頃。
「あースッキリした!」
「今度陰口を言う時は、私たちに見つからないようにね?」
「「……は、はい……」」
彼女たちの寸止めだらけのパンチにキック。そして、例の女子高生の素敵さ列挙攻撃が、無事終了。
「(さすが、あのお方に選ばれただけのことはある)」
女子高生を連れて行ったその人は、はてさて今どんな話を聞かされているのやら。……彼女の顔が見られなくなるのは、ちょいと残念だ。
そんなことを思いながら、男はポケットから可愛く包装された包みを出し、朱色のリボンをスルスルと解く。
「……? 先輩、それって何ですか?」
「何ってお前、今日と言えば、そりゃ答えは一つだろ」
「え! 誰ですか!? ま、まさか雨宮さん? それとも東條さん!?」
「葵ちゃんだよ」
皆さんに――って、一つ一つ丁寧に包装してくれたそれを、事務所に置いていったそうだ。
そう伝えたはいいものの、てっきりまた「点数稼ぎかよ」「女子高生は暇で何より」とか言われるんじゃないかと思ったけれど。
「へえ。そういうところは年相応なんですね」
「気配り上手なんですね、彼女。あと女子力高め」
どうやら、それも杞憂だったらしい。彼女たちの攻撃が効いたのか。
「ま、でもそうですよねー。このオフィスにそこまで気の回る人とかいないですしー」
「雨宮さんとか東條さんとか、もはや女子じゃないし。鬼だし」
「……お前ら、すげえな」
「「え??」」
「「歯食い縛りなさい?」」
「「!!!!」」
怖いもの知らずとは、彼らのことを言うのだろう。
「……んま。今度お礼言っとかないと」
先輩の男は巻き込まれないようにそそくさと喫煙所を退散したのだった。
❀ ❀ ❀
地下にあるいつもの部屋へと通されたわたしは、促されたソファーへと腰を下ろした。
「――聞こう」
温かいはちみつレモンを二つ、用意した彼は机を挟んだ向かい側に座った。
頷いたわたしは鞄の中から資料を取り出し、それを机の上へと広げる。
「貴重なお時間を割いて戴き、ありがとうございます」
「無駄に話すなら私は席を外す」
「出出しのテンプレに文句言わないでくださいよ」
「あと3秒」
せっかちでもいちいち優しく文句を言う辺り、ちゃんと聞いてくれる気があるのだなと、一人心の中で小さく笑う。
「先程もお伝えしましたとおり、本日お伺いしたのは他でもない、貴方にお許しを戴きたかったからです」
「……だから、その許しの内容についてを私は――」
「ヒナタくんとの交際を、認めてください!」
「……」
ボスは、ぴくり頬を動かしものすごく嫌そうな顔をした▼
その後、それはそれは大袈裟な動作で頭を抱えた▼
そして、ものすっごい大きな溜め息を吐いた▼
……なんでえッ!?



