「なんですか先輩。……ハッ。まさか女子高生の肩持つんですか?」
「絆されてますねー」
「いやいやそうじゃねえって。まあ、俺も確かに、あの子のことをあまりよく思っていなかったことは認める」
でもな――彼がそうして話し始めたのは、まだ彼女がこのオフィスに何度か出入りしたくらいの時期のこと。真夏の海の上での、彼女の功績だった。
「……いやいやいや。まぐれでしょー絶対」
「でもマジで見つかったし」
「天才様は俺らとはいろいろ違うんですよ」
「まあ、確かにあの子のおかげで一つ大きな仕事に片がついたし。頭がいい子だなーとは思ったけど……」
でも、阿呆だったぞと。それはそれは馬鹿だったぞと。
「「天才と何とかは紙一重……」」
「でもすっごいいい子だ。だから、そんなに喧嘩腰になるなよ。そんなんだからお前ら、仕事もまわってこなけりゃ、給料も低いんだぞ」
「なっ……!」
「そう言う先輩だってそんなに給料高くないでしょう!」
「言いたい放題言ってくれて……!」と、今にも掴み掛かっていきそうな二人の腕を、がしっと誰かが掴んで止めに入る。
「黙って聞いていれば」
「……あ、雨宮、さん」
「言いたい放題、言ってくれちゃったのはどっちかしらねえ」
「……! と、東條さん!?」
火の点いていない煙草を咥えた二人の顔には、お怒りマークがたくさん浮かんでいた。先輩の男は、それを見て一人爆笑。
「あんたらが思ってることはきっと間違いじゃないし、口には出さないだけで彼女のことをそんな風に思ってる奴はまだいるでしょうよ」
「でも、その彼女のことをよくも知らないで好き勝手陰で悪口を言うのは、大の大人の男としてどうかしら」
「私たちは少なからず彼女に恩があるから、贔屓目に見ている部分もあるでしょう。それは否定しないわ」
「だから、これだけは言っておく。……情報を扱う人間が、情報に乗っ取られては駄目」
「自分の、その目で見て判断をしなさい。それでもやっぱり気に食わないところがあれば、好きに陰口を叩いても構わないから」
「だから、謝らなくていいわ。……ただ、やっぱり自分の大切な子を悪く言われるのは、あまりいい気分ではないから」
「え。あ、あのっ。お二人とも……?」
「い、一体何をする気なんです……?」
バキボキと、指を鳴らしながら据わった目で近付いてくる彼女たちに、男二人は思わず後ずさった。
「(おーおー。面白い展開になったな)」
他人事のようににやつきながら次の煙草に火を点けた時。二人の男の逃げ場がなくなった。
「……ま。お前ら、取り敢えず歯は食い縛っとけよ」
「「……!?!?」」



