すべての花へそして君へ③


(なんであのこと知ってんだよ……!)


 ゴーン、ゴーンと、除夜の鐘が鳴り響いていく。このまま、俺の煩悩も除去していってくれないだろうか。


「やっぱり何かあったんだ」

(そういやこいつ、なんで俺がこのワイン飲みてえって知って……)


 ていうか俺のワインじゃねえのかな。がばがば飲んでるけどさ。


「一個聞きてえんだけどよ」

「ん? どうぞどうぞ」

「なんで俺が、酒飲みだって知ってんだよ」

「それはまあ、調べたからね」

「調べただあ? どうやって」

「それは……まあ、いろいろと」

「いろいろやって、わかるもんなのか」

「それはまあ、そのいろいろの度合いにもよるけど」

「……正直な話、どの辺まで知ってんだ」

「え? 何を……というか九条くん、ちょっと目が据わってない?」

「こちとら自棄酒が入ってんだよ。んで、どうなんだよ」

「……君のことを、でいいんだよね?」


 確と頷くと、彼は一度考えるように顎に手を当てた。
 そして一つ、大きくため息を落とす。


「聞かない方がいいと思うんだけどな」

「だったら一つ、俺が絶対他人に知られたくない秘密は」

「いやいやいや、秘密にしてるんならわかんないでしょ。まあ、強いて言うならだけど……」