「……なんて?」
「え? だから、シュバシコウに……」
「そうじゃない」
「そうなのに……」
頭を抱えたヒナタくんは、「そりゃあんなところで読めないわけだよ」とぶつぶつ大きめの独り言を呟いている。
それについては聞かなかったことにしてあげて、わたしは詳細を述べることに。
「シュバシコウって、何か知ってる?」
「あれでしょ? 人の赤ん坊を運んでくる伝説の……え」
「そうそう! それでね」
「赤ん坊を、運びたいの? は?」
「あ、いやいやそうではなく。“のように”というのが味噌でして」
「……」
「……ヒナタくんはさ、どんな時に幸せを感じる?」
「そりゃいろいろあるけど……」
シュバシコウは、本当にたとえばの話。
たとえ伝説でも、この鳥は赤ん坊という、確かに【幸せ】を運んでいる。笑顔を運んでいる。
「……そんな人にね? なりたいと思ったの」
他の誰にもできないことを。わたしらしく。届けたいと思うんだ。
一度、深く息を吐く。
「花の便りを、届けてみようかなって」
これが、わたしの――誓い。
「……花便り?」
「花が咲いてたら、なんだか嬉しい気持ちにならない? あったかい気持ちに、頑張ろうって気持ちにならない?」
「……」
「穏やかな、優しい笑顔になれると思うんだ」
そんな、ちょっとした幸せでいいんだ。
便りが届いたその時。この世界の、どこかで咲いた花に、誰かが優しい気持ちになれたら。
「それ、ちゃんと理事長に書いて渡してるの? 本当にシュバシコウみたいに赤ん坊届ける仕事が降ってくるかもよ」
「その辺は大丈夫! (注)で付け足しといたから!」
「多分、歴代で初めてなんじゃないかな。その紙に(注)とか書いたの」
「……だって、他にも書きたいことがあったんだもん」
「は? まだなんか書いたの? 読むの大変だっただろうな」
「大変じゃないよ! 寧ろそっちはすぐ読めたと思う」
そしてこれは、わたしの――宣言。
「【誰よりも幸せにする!】って」
「……誰を」
「君を!」
「……………………」
形容しがたい顔で固まったヒナタくんだったけれど、何かを諦めたように項垂れた。
「(わざわざそんなところに書かなくてもいいだろうに)」
やっぱり、そんなこと書かない方がよかったかな。ちょっと……いや、大分その辺の自覚はあったんだけど。
「ヒナ――っ!?」
心配になりながら覗き込んでいたら、声を上げる間もなく強い腕の中に閉じ込められた。
「男前だね」
「そ、そう?」
「あとバカ」
「うぐっ」
「そんなこと書いてあると思ってないでしょ普通。読む側の気持ちも考えてあげてよ」
「め、面目ない」
「あと、そんなこと書かれた方の身にもなって」
「……ひなた、くん?」



