ある可能性に行き着いたわたしに、ふっと彼は、小さく笑みをこぼす。
「もちろん、誓いたいことが全くないわけじゃないけど、正直オレは二の次でいい」
「ヒナタくん……」
「だからさ、折角だし。誓いたいこと誓っておけばいいんじゃない? 別に、一個しか叶えられないって言い伝えが残ってるわけじゃなし」
「……」
「ま、こんなVRじゃ効果も半減どころか、絶対叶わなかったりしてね」
「ぶ、ぶいあーる?」
「あ、ネタバレしちゃった。ごめんごめん」
「う、嘘! これ、本物じゃないの!?」
「え? あーうん、バーチャルだけど」
「すごいすごい! 初めて体験したー!」
「…………」
「これどうなってるの? というか物凄い高品質じゃない?」
「それはまあ、いろいろツテがありまして」
「もしかしてこれ、ヒナタくんが作ったの?」
「……まあ」
「わあー! すごいすごいっ!」
って、はしゃいでる場合じゃなかった。
確かに、技術もクオリティーもとっても素晴らしいけれど、今は取り敢えず、ちょっとこっちの方に置いておいて。あとで思いっ切りベタ褒めしてやろう。
「わたしのために、連れてきてくれたの?」
「連れてきたというか、映し出したというか」
「ヒナタくん」
「そうだよ」
だったら――はぐらかさずに答えてくれた彼へ、わたしも答えよう。
彼の両手を取り、すっと見上げてその瞳を見つめ返す。
「わたしは、たくさんの人を幸せにしたい。笑顔にしたい」
ボスからの許可は渋々だったがいただいた。仕事という括りを抜けて、ボランティアやお手伝い、たまにアルバイトという形で関わらせてもらえることになっているけれど。
「本当はね、すべての人をそうしたい。でもさすがにそれはできないから……」
いつ。どうやって。どんな風に。具体的なことは、ハッキリと決まったわけではないけれど。
握ったヒナタくんの手を、そっと開く。それに添えるように、そっと触れる。そっと支える。
「わたしの、この手の平に乗る分だけ。わたしの、この手が届くところまで」
ほんの少しだけでもいいから、届けたい。幸せって、こんなにも素敵な気持ちになれることなんだよって。
君が、わたしに教えてくれたことを。教えてあげたいんだ。たくさんの人に。
「……それで? 理事長に渡した紙には、そうやって書いたわけだ」
「ううん。【シュバシコウのようになりたいです!】って書いた」



