
舞ったのは、桜の花びら。一瞬、窓から入ってきたのかなって、そう思ったけれど。
「……大きな、桜の木……?」
そもそも、ここはどこなのだろう。わたしはいつの間に、教室を飛び出して外に出ていたんだろう。……あれか。平衡感覚が一瞬失われそうになった時か。
「昔さ、この地区には言い伝えがあったんだって」
「ヒナタくん……」
「それが今の桜でジンクス的な感じに残ってんのかな」
「ここは、どこ? 何をしたの……?」
「え。結構大掛かりだったから、簡単に種明かしはしたくないんだけど」
「え? 手品なの?」
「知りたい?」
「……い、言い伝えって……?」
猛スピードで天秤にかけた結果話を逸らしたわたしに小さく笑って、ヒナタくんはそっと、わたしの手を握る。
「桜の下で誓いを交わすと、必ず叶うって話」
「普通そういうのって、恋人同士が愛を誓い合ったら永遠に幸せになれるとかじゃないの?」
「オレもそれ思ったけど、結構同性同士の誓いも多いんだって」
「そっか。だからキスすればとかで残ってないんだね」
「…………」
「……? ――ハッ! 違うよ!? 決してキスしたいわけじゃ」
「うん。さっきしたもんね」
「――!? し、知らない!」
「ん? 覚えてない? 撮ってあるけど見る?」
「!?!? や、やっぱり撮ってたんだあー!!」
頬が赤くなるのもお構いなしにヒナタくんを問い詰めてみるけれど、当の本人はただ可笑しそうに笑っているだけ。
なんだか、少し幼い笑顔で笑う彼だけれど……。そもそも何故、こんな手品をしてくれたのだろう。
決して嫌なわけじゃない。素敵だし、綺麗だし、とっても嬉しい。花畑のサプライズでさえ驚いているのに、こんな……瞬間移動みたいなすごい手品ができるなんて全然知らなくて。
「女子ってこういうの好きだよねー」
「……誓いたいことがあるの?」
「じゃあ、折角だから愛でも誓っとく?」
「それも素敵だと思うけど、今はヒナタくんの本心が聞きたいな」
「本心……か。別にそれも本心じゃないことないんだけど」
「え? ……え。もしかしてヒナタくん」



