妥協を許さない完璧主義者ヒナタくんの細かい指示のもと、ようやくポジションが決まったらしく、わたしは早く早くと彼を手招きした。
「動くなって言ったよね」
「写真撮る時は動かないよー。だから、早くーヒナタくん」
「だから、撮るから動くなって言ってるの」
「ええ!? なんでヒナタくんと一緒じゃないの!?」
「誰も一緒に撮るなんて言ってないけど」
「一緒じゃなきゃやだっ」
折角ヒナタくんもいるのに、何が悲しゅうて一人で写らにゃいかんのか。
「……わかった」
折れる気がないとわかったらしい、盛大に溜め息を吐いたヒナタくん。スマホを片手にこちらへとやって来る。
「あのカメラで撮らないの?」
「あれは後」
「どうしてもわたし一人を撮りたいのね」
「ほら。撮るから上向いて」
「はいは、――んんっ!?」
唇が塞がれたと同時、シャッターが切られた音がした。
え。何撮ったの。え? まさか、今の撮ったんじゃないよね?
「ハーイ。じゃあ撮りマース」
「ええっ?!」
答えてくれないままそそくさと教壇に立った彼は、しれっとした顔でデジカメを構えて……って、え? サングラス??
「フラッシュ焚くから眩しいかもだけど撮り直しきかないから頑張ってねハイチーズ」
「ちょ、ちょっとおー!?」
そして心構えも追求も何もできないまま、ノンストップで注意事項を告げたヒナタくんは、それはもうさっさとシャッターを押した。
――瞬間。とても強い光が、世界を駆け抜ける。
(こ、これって、眩しいどころの話じゃないよ!?)
白い光が、わたしを包み込む。まるで、洞窟のような暗い場所から一気に太陽の真下に来たみたいな感覚。目も開けていられず、このままここにいるだけで平衡感覚までおかしくなりそうだ。
「っ。ひ、ヒナタくん……!」
目を閉じていても真っ白な世界に不安を感じ、咄嗟に彼の方へと腕を伸ばす。
「大丈夫だよ」
大きな手がすぐにわたしを捕まえてくれて、そして包み込むように握ってくれる。不安で震える手を、落ち着かせるように。
「隣にいるよ。大丈夫」
引き寄せられた腰に回る、強い腕の力。そっと頭を撫でてくれる、優しい手の平。気付けば、彼に体を委ねていた。
「……ん。もう大丈夫かな」
小さく呟かれた言葉にふと、光の強さが柔らかくなっていることに気付く。
「もう目開けて大丈夫だよ、あおい」
耳元で囁かれる、穏やかな声。彼が触れたのか、前髪がまるで風に吹かれたように揺れた。
(……ん? 風?)
そういえば、先程からスカートも揺れてる気がする。足下も少しスースーするし、ほのかに花の香りだってする。
でも、窓が開いている様子はなかったのに、なんで風が吹いているんだろう。
「……わっ。な、何……?」
その時、一陣の風が通り過ぎていく。目の端に、何かが映り込んだ。



