一息ついてスカートに戻そうとすると、再び手の中でスマホが震えた。短いからメールみたいだけど、相手は開かなくても何となくわかった。流れ的に。
《卒業おめでとう
また今度お互いの時間が
取れた時にでもお祝いさせて》
内容を見るだけで、どんな表情をしながら打ったのか簡単に想像できるのは、きっとそれだけ長い間ともに過ごしてきたからだろう。
笑わずにはいられない素っ気ない文面に、わたしはそのまま電話をかけた。
「なあに? 拗ねてるのシント?」
『そんなわけないじゃん』
「膨れっ面してるでしょ」
『してないこともない』
「じゃあお祝いしてくれないの?」
『する』
即答に思わず噴き出していると、電話先からは『だって!』と、言い訳染みたお馬鹿な反論が返ってくる。
『普通なら今頃、おめでとうって言いながら抱きしめてベッドインしてるのに』
「してないしてない。お仕事なんだから仕方がないでしょう?」
『葵はわかってない』
「何が」
『学校を卒業するってことが、葵にとってどういうことか』
「……」
『手塩に掛けた子が、こんなにも立派になって……っ。まともに学校に行けなかった子が、卒業証書なんかもって帰ってきてみなよ。お母さん泣いちゃう』
「急いでるからじゃあねー」
え? 扱いが酷い?
そんなことないよー。寧ろこれが正しいシントのあしらい方だよー。
「〈今度美味しいご飯屋さんに連れて行ってね! 勿論シントの奢りで!〉……っと。よし! これで今頃超ご機嫌に――」
――ピロロン。
《帰ってきたら覚えとけよ》
あれ? やっぱり間違った?
「……ま。最後にこれくらいの我が儘なら聞いてあげよう」
あの子にはたくさん、本当にたくさん。感謝してもしたりないほど、お世話になったんだから。



