すべての花へそして君へ③


 一息ついてスカートに戻そうとすると、再び手の中でスマホが震えた。短いからメールみたいだけど、相手は開かなくても何となくわかった。流れ的に。


《卒業おめでとう
 また今度お互いの時間が
 取れた時にでもお祝いさせて》


 内容を見るだけで、どんな表情をしながら打ったのか簡単に想像できるのは、きっとそれだけ長い間ともに過ごしてきたからだろう。
 笑わずにはいられない素っ気ない文面に、わたしはそのまま電話をかけた。


「なあに? 拗ねてるのシント?」

『そんなわけないじゃん』

「膨れっ面してるでしょ」

『してないこともない』

「じゃあお祝いしてくれないの?」

『する』


 即答に思わず噴き出していると、電話先からは『だって!』と、言い訳染みたお馬鹿な反論が返ってくる。


『普通なら今頃、おめでとうって言いながら抱きしめてベッドインしてるのに』

「してないしてない。お仕事なんだから仕方がないでしょう?」

『葵はわかってない』

「何が」

『学校を卒業するってことが、葵にとってどういうことか』

「……」

『手塩に掛けた子が、こんなにも立派になって……っ。まともに学校に行けなかった子が、卒業証書なんかもって帰ってきてみなよ。お母さん泣いちゃう』

「急いでるからじゃあねー」


 え? 扱いが酷い?
 そんなことないよー。寧ろこれが正しいシントのあしらい方だよー。



「〈今度美味しいご飯屋さんに連れて行ってね! 勿論シントの奢りで!〉……っと。よし! これで今頃超ご機嫌に――」


 ――ピロロン。


《帰ってきたら覚えとけよ》


 あれ? やっぱり間違った?


「……ま。最後にこれくらいの我が儘なら聞いてあげよう」


 あの子にはたくさん、本当にたくさん。感謝してもしたりないほど、お世話になったんだから。