取り敢えず。食後の抹茶パフェに、慰めてもらうことにしよう。足りなかったらミックスジュースも頼もう。
「いや、ここは期間限定抹茶ティラミスも捨て難い」
「さっさと決めろ。オーダー待ちが出ているんだ」
「ああ、だったらやっぱり抹茶パフェで」
「少々お待ちください」
ご機嫌斜めでオーダーを通しに行くレンの背中を横目で見ながら、オレは悩ましげに頬杖をついてみた。……やっぱりティラミスも気になる。
定食屋の常連になって早半年。この間もらったミックスジュースと抹茶パフェは予想を遙かに超えた美味しさだったので、それ以来いつも頼まずにはいられないけど、いつも頼む同じメニューが好きすぎて、なかなか違うものや新メニューには手を出せずにいた。そんな今日この頃。
一週間後にクリスマスパーティーを控えているにも関わらず、相も変わらずオレは、レンの邪魔をするために遊びに来ていた。
……暇人? そりゃそうでしょうよ。遊び相手は今日もオレに連絡一つ寄越さず、恋人という名の仕事とよろしくやってんだからさ。
(オレはいつからこんな拗ねキャラに……)
チカの背中を泊まり掛けで追い回したあの日から一週間。二人に言っておいて、レンに言わないのは可笑しい気がして、彼の時間がとれたときに、あのことについて話をした。
はじめは、みんなと同様呆れられた。同情もされた。
『お前の気持ちは勿論わかる。否定をするわけじゃないが、全てを肯定することもできない。でも、お前のしたかったことは一体何だったんだ。ちゃんと自分で考えて考え抜いて、彼女に伝えたんだろう? それが変わっていないなら、最後まで貫き通せ』
ふと周囲に目をやると、今日もやはり女性客で賑わっていた。度々感じる好意的な視線も、きっとその誰かからのものだろう。
(生憎彼女持ちなので他を当たってくださいねー)
自己評価はそれほどいいと思ったことないけれど、周りから嫌と言うほど言われているので、一応この顔がイケメンの部類に入るということは知っている。性格は誰より面倒臭いけど。
「抹茶パフェとミックスジュースお待ち遠様」
頼んでないのに持ってくるとは、流石常連。
「ねえレン、抹茶ティラミスって美味しい?」
「見る目があるからって、自信満々にオレを仲間にしようとした奴が、まさかここまで優柔不断だったとは」
「意地悪すると倍になって返ってくるよ」
「見る目は衰えていないぞ」
「パフェ頼む前に言ってよ」
「限定期間が終わる前にまた来い」



