「幸せのお裾分け」
「……へ?」
「幸せになった人の何かを持っていると、自分にもその幸せがやってくる」
「……」
「的な感じで、こんなことになってます」
「成る程理解しました」
今朝、なんだか悪寒がするなあと思って一枚多く着てきたけど、わたしの予感はやっぱり当たっていたらしい。よかった。よかった。
…………幸せのお裾分け、か。
「あっちゃん?」
「……ううん。すごくね? 幸せだなーって思ったんだ」
だったら、願っていよう。ここにいるみんなの未来が、幸せなものであるように――と。
「んじゃ、最後に。お前さんたち、有名になったら恩師にはきちんと恩返しをするように。以上。解散。後は好きにしろー」
「え。それが有難いお言葉……」
「なんだ。何か文句あるのか」
「そういえばキク先生、全然はだけてませんね?」
「あるんだなあ文句が」
「いえいえ。先生の幸せはこれからですから」
「……」
「ね? キク先生?」
「……ま、そうさな」
「その時を楽しみにしてますねー」
「ちょっと二人とも。意味ありげな目でこっち見ないでっ」
――――――…………
――――……
「あ! あーちゃん! 卒業おめでとう!」
「すごい恰好ですね。ご愁傷様です」
「そのTシャツ何書いて……【混ぜるな危険】?」
あのあとクラスみんなのアルバムに、メッセージとサインを書きまくってやったぜ! あと写真もいっぱい撮ってやったぜい! ファンレター? いっぱいもらったぜい?!
そんな卒業後のいろんなお楽しみを、クラスでたくさん堪能してきたところで、約束していた彼のところへとやって来たのだけれど。
「おれら今から生徒会室行くから、一緒に行こー!」
「あ。そうしたいのは山々なんだけど」
ヒナタくんはご不在のようだ。
「氷川。オレたちは先に行って準備しておこう」
「いーやーだー! あーちゃんと一緒がいいー!」
察したレンくんにオウリくんが引き摺られていくのを見送ってから、残ったチカくんは眉を顰めた。
「にしてもヒナタの奴。どこ行ったんだか」
「チカくんもわからないの?」
「ああ悪い。約束でもしてんの?」
「うん、一応」
「アレなら校内放送で呼びかけてくるぞ」
「あはっ。大丈夫。わたし、ヒナタくん見つけるの得意だから」
「……そっか。じゃ、あとでな」
「うん! 楽しみにしてるね!」



