すべての花へそして君へ③


 ミズカさんヒイノさんを見送って教室へと戻ると、担任に「は?」って顔をされた。変に勘違いをしたのはそちらだというのに。わたしには、怪訝な顔をされる謂れはないぞ。


「まだ、先生の有難いお言葉を戴いておりませんので」


 って言ったら、ものすごーい嫌そうな顔されたけど。


「あーじゃあ、帰ってきたんなら、お前さんも最後に何か喋ってけ」

「はい?」

「今一人一人喋ってるんだよ」

「は、はあ」


 そういえば、クラスの中には涙ぐんでいる人もいた。つまりは、クラスのみんなにお別れの言葉をと。そういう感じに言葉足らずなりに受け取りましたが、よかったですかね。


「そう、ですね……」


 小さく頷きながら、視線を僅かに下げる。
 このクラスであったこと。このクラスだったからできたこと。この、二年という短い間の思い出を、そっと振り返る。

 窓の外に視線を移すと、そこには春の青い空が広がっている。青い青い空。この綺麗な空を、今のわたしと同じように見上げている人がいるだろうか。……見られてよかった。

 そして目の前には、一緒に授業を受けてきたクラスメイト。一緒に、いろんな行事を目一杯楽しんできた仲間たち。


「……わたしと、仲良くしてくれてありがとう」


 振り返る過去に、みんなのたくさんの笑顔がある。それは、わたしにとっては何にも代え難い宝物。
 それが、何よりも嬉しい。わたしは、とっても幸せ者だ。

 感謝を伝えると、何故かクラスメイトたちがドドドーッと押し寄せてきた。な、何事だ!? 何が起こったんだ!?


「お前さんが思っている以上に、お前さんが愛されてるってことだ」

「へっ!? あ、ちょ、ちょっと……!?」


 そして、あれよあれよという間に、何故か知らないけどはだけた。……よかった、中にTシャツしっかり着ておいて。


「あ、朝日向様と。同じクラスでとても幸せでしたわ!」

「え? あ、ありがとう田中さん。わたしもだよ」

「朝日向さんと、楽しい思い出ができてよかったよ」

「う、うん。わたしも、鈴木くんと楽しい思い出できて嬉しかったよ」

「葵様のこの第二ボタンと素敵なお写真の数々! 後生大事にしていきますわー!」

「しゃ、写真? あ、ありがとう佐藤さん……?」


 感謝されているのはわかったけれど、誰か。キク先生よりも詳しくこの状況を教えてくれ。


「あっちゃん。実はこれもジンクスなの」

「あ! き、きさ……キサちゃん?」


 それにみんなも。随分とはだけたお姿になられましたね。
 ……して、そのジンクスとは何でしょう。