ミズカさんヒイノさんを見送って教室へと戻ると、担任に「は?」って顔をされた。変に勘違いをしたのはそちらだというのに。わたしには、怪訝な顔をされる謂れはないぞ。
「まだ、先生の有難いお言葉を戴いておりませんので」
って言ったら、ものすごーい嫌そうな顔されたけど。
「あーじゃあ、帰ってきたんなら、お前さんも最後に何か喋ってけ」
「はい?」
「今一人一人喋ってるんだよ」
「は、はあ」
そういえば、クラスの中には涙ぐんでいる人もいた。つまりは、クラスのみんなにお別れの言葉をと。そういう感じに言葉足らずなりに受け取りましたが、よかったですかね。
「そう、ですね……」
小さく頷きながら、視線を僅かに下げる。
このクラスであったこと。このクラスだったからできたこと。この、二年という短い間の思い出を、そっと振り返る。
窓の外に視線を移すと、そこには春の青い空が広がっている。青い青い空。この綺麗な空を、今のわたしと同じように見上げている人がいるだろうか。……見られてよかった。
そして目の前には、一緒に授業を受けてきたクラスメイト。一緒に、いろんな行事を目一杯楽しんできた仲間たち。
「……わたしと、仲良くしてくれてありがとう」
振り返る過去に、みんなのたくさんの笑顔がある。それは、わたしにとっては何にも代え難い宝物。
それが、何よりも嬉しい。わたしは、とっても幸せ者だ。
感謝を伝えると、何故かクラスメイトたちがドドドーッと押し寄せてきた。な、何事だ!? 何が起こったんだ!?
「お前さんが思っている以上に、お前さんが愛されてるってことだ」
「へっ!? あ、ちょ、ちょっと……!?」
そして、あれよあれよという間に、何故か知らないけどはだけた。……よかった、中にTシャツしっかり着ておいて。
「あ、朝日向様と。同じクラスでとても幸せでしたわ!」
「え? あ、ありがとう田中さん。わたしもだよ」
「朝日向さんと、楽しい思い出ができてよかったよ」
「う、うん。わたしも、鈴木くんと楽しい思い出できて嬉しかったよ」
「葵様のこの第二ボタンと素敵なお写真の数々! 後生大事にしていきますわー!」
「しゃ、写真? あ、ありがとう佐藤さん……?」
感謝されているのはわかったけれど、誰か。キク先生よりも詳しくこの状況を教えてくれ。
「あっちゃん。実はこれもジンクスなの」
「あ! き、きさ……キサちゃん?」
それにみんなも。随分とはだけたお姿になられましたね。
……して、そのジンクスとは何でしょう。



