すべての花へそして君へ③

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 それから式は流れるように。


『この場所で、大切な仲間に出会えたこと――』


 在校生代表、チカくんの送辞。


『一歩一歩、成長した誇りと、そして、支えてくれた先生方、家族、そして仲間たちへの感謝を胸に――』


 そして、卒業生代表のアキラくんの答辞と、滞りなく進みに進み。


「……あれま。卒業しちゃった?」

「あっという間だったね」


 カタンと椅子を引いて席に着く。教室に戻ってきた卒業生たちは、先生が来るまで各々駄弁っていた。
 にしても……初体験ということもあったせいか。わあすごい! おお素敵! きゃあー! ……と、いろんなことに感動している間に卒業式は終わってしまった。

 でも……おかしくはないか? 卒業式っていったら、もうちょっとお涙頂戴な展開を想像していたのに。何故だ。何故わたしはこんなにもけろっとしているんだ。


「あっちゃん、高校の卒業式なんてこんなもんよ」

「みんな、慣れに慣れてしまっていると」

「顔触れも変わらないしねえ」

「でも、だからこそ寂しく感じないの? わたしはわからないけど、長く一緒にいた分そういうのは積もるんじゃ」

「これで最後ってわけじゃなし」

「……え?」

「それに学校が学校だから。きっと、いやでもどこかで顔を見ることになると思うよー」

「……そっか。そうだよね」


 んーでも、微妙にわたしの中で噛み合ってない気がするのは、なんでなんだろう。


「答えに不満そうな顔してるぞ?」

「ふ、不満というわけでは」

「そっか。じゃあ物足りない顔だ」

「も、物足りない……?」


 そこまで話して、キク先生が欠伸をしながら気怠げに教室の中へと入ってくる。これもこれで、見納めだと思うとちょっと寂しいものだ。
 ふと教室の後ろの扉を見ると、保護者の中にミズカさんとヒイノさんを発見。わたしを捜しているようだ。

 おーい、娘はここですよー。……ん? え? なになに?


「だって、特別な人には余るくらいたくさんお祝いして欲しいじゃない?」

「キサちゃん……」

「それに、気を許せていないと、泣きたくったって泣けないもんなのよ、女は」

「女王様だと特に?」

「プライドが邪魔するんだよねー。あ、でもそれはあっちゃんだって一緒でしょ?」

「わたし? わたしは……」