すべての花へそして君へ③


「――――っ」


 言葉をなくすとは、まさに現状のことを言うのか。


「……ぶはっ」


 否、ただ堪えていただけだった。そしてそれは、とてもじゃないが堪えきれなかった。
 自分が噴き出した声に会場内がざわついている中。目の前の少女だけが一人、此方を見つめながらほくそ笑んでいる。


(……全く。君という子は)


 確かに、何かやってくれるのではないかと思っていたけれど、今すぐここでとは流石のぼくも予想できなかったよ。


『あー、ごほん。……受理しましょう。君のこの先の未来が、幸せであり続けますよう』

「……あれ? 読まないんですか?」

「空気を読んだの。流石のぼくも、これは音読できない」

「わたしは全然構わないのに」

「君以外の生徒保護者教員その他が構うの。ぼくが一番困るの」


 どこまでも予想を裏切ってくれる彼女に脱帽。やはり君は、敵に回さない方がいいようだ。
 納得いかない顔の彼女の背中を見送って、一つ。小さく息を吐くと、自然と笑みがこぼれた。


(成る程。この儀式は君にとっての誓い――そんな意味があったんだね)


 なら、ぼくができることはただ一つ。


(――ぼくも、ここに誓おう)


 君の、願いの行く先に幸せを届けることを。