「――――っ」
言葉をなくすとは、まさに現状のことを言うのか。
「……ぶはっ」
否、ただ堪えていただけだった。そしてそれは、とてもじゃないが堪えきれなかった。
自分が噴き出した声に会場内がざわついている中。目の前の少女だけが一人、此方を見つめながらほくそ笑んでいる。
(……全く。君という子は)
確かに、何かやってくれるのではないかと思っていたけれど、今すぐここでとは流石のぼくも予想できなかったよ。
『あー、ごほん。……受理しましょう。君のこの先の未来が、幸せであり続けますよう』
「……あれ? 読まないんですか?」
「空気を読んだの。流石のぼくも、これは音読できない」
「わたしは全然構わないのに」
「君以外の生徒保護者教員その他が構うの。ぼくが一番困るの」
どこまでも予想を裏切ってくれる彼女に脱帽。やはり君は、敵に回さない方がいいようだ。
納得いかない顔の彼女の背中を見送って、一つ。小さく息を吐くと、自然と笑みがこぼれた。
(成る程。この儀式は君にとっての誓い――そんな意味があったんだね)
なら、ぼくができることはただ一つ。
(――ぼくも、ここに誓おう)
君の、願いの行く先に幸せを届けることを。



