普通の高校生ならば、人生で何度かは卒業というものを経験したことがあるだろう。この、儀式に似たようなものが、一体どのような意味を成すのか。そして、自分にどのような感情が湧き上がってくるのか。
――受け入れるのなら、せめていろんなことをさせてやりたい。
ただの高校生ではなく。ただの生徒会執行部ではなく。たとえ、体は大人でも。たとえ、いくら賢くても。心が真っ白な。まるで、赤ん坊のように、純粋な君に。
……敵? 味方? そんなものは関係ない。
ここは学び舎。何かを学ぼうとしている者たちへ、門を閉ざすことは決してないのだから。
(彼女には今、一体この景色がどのように見えているのか)
そして、そんな純粋な君は、私にどんな道を示してくれるのだろう。
『――Sクラス』
彼女に与えた選択は、担任の彼が必死になって掴んできてくれたもの。誰よりも多いその可能性に、思わず苦笑いをこぼしながら二つに絞った。
開いた時、君はどんな反応をしたのだろう。困らせただろうか。喜んでくれただろうか。悩ませてしまっただろうか。その時の反応を、リアルタイムで是非とも見てみたかったけれど。
ただまあ、少し意地の悪いことをしてしまった自覚があるから、これでよかったことにしておこう。
『朝日向葵』
「――はい!」
悪という悪をコテンパンに叩きのめし、この世界の平和を守る姿。国の……世界のトップの一員として、共に監視見守る姿。
どちらも、君にとても似合い過ぎているだろう? どちらの姿も見てみたいと、そんな願望もないわけではないけれど。
それでも、期待せずにはいられない。
君なら、何かしてくれるのではないか――と。
『卒業証書。……朝日向葵殿』
「よろしくお願いします」
「はい。じゃあ少し読ませてもらうね」
でもきっと、君なら選ぶだろう。選んだのだろう。
(えーっと、なになに……?)
君にとっても。そして、まわりのたくさんの人々にとっても。あたたかくて、やさしくて、幸せな未来を――…………ん?



