そう言うと、彼はチャームポイントの八重歯をニッと出して、お得意の表情で嬉しそうに笑った。
「オレな、お前とアオイがくっついたのは、運命だったんじゃないかなって思うんだ」
「え。いきなり何……?」
そんなことを恥ずかしげもなく言う彼は、笑ってはいるものの冗談を言っているわけではなさそうだった。
「昔一度会って、そしてまたこうして会って。何度も起こる偶然っていうのは、結局二人を未来まで繋げる運命なんじゃないかと」
「ポエマー……」
「まあ聞けって。だから、別に無理に連絡を取ろうとしなくていいんじゃねーのかなって思うわけよ」
「どうやったらそうなるの」
「お互いがお互いのこと考えてるなら、その機会はほっといても来るってことだよ」
「……考えてたら、いいけど」
「考えてないわけないだろ。そんな意味深な文章送ってくるぐらいには、お前とのことちゃんと話さないといけないって思ってるよ」
「……そう、かな」
……そうだと、いいな。
そう思いながら見上げた夜空からは、真っ白な雪が降り始めていた。
「道理で寒いわけだよ」
「ま、ちゃんと何言いたいか考えとけよ。今度のクリスマスパーティーには来るらしいから」
コンマ何秒の間で、彼が言った言葉の意味を理解することから、その理不尽に対する苛立ちの大量生産がオレの中で行われるのは、あまりにも容易なことだった。
「……何でそんなことチカが知ってるの」
「り、理事長から訊いた」
「なんで理事長はそんなこと知ってるの。そもそも、なんでチカは訊ける立場なの」
「オレとアオイが、パーティーの担当一緒だったから」
「マジ一人でやるのは大変だなー。ハハハー……」と笑いながら後退り始めるということは、他にも何か疚しいことをこいつは隠している。
オレは、一気に距離を詰めた。
「じゃあ何。もしかしてチカはあいつとやりとりしてるわけ。彼氏のオレに内緒でこそこそと」
「馬鹿野郎。してたらさっさとオレと縒り戻してるわ」
「お前と戻る縒りなんてねえよ」
「おいおい、マジ切れすんなって! 冗談だろ!?」
そうして本気で逃げ始めたので、オレもその背中を超本気で追いかけた。絶対なんか隠してやがるこいつ。
「……あ」
「は? どうしたんだよ」
「今いいこと思いついた」
「絶対するな! つーか来るなあ!!」
“もしかして、ちょっと身長伸びてるんじゃない?”
そう思ったことは、一生言わないことにした。
小さくても、こいつの背中が大きいことは、ずっと前から、いやってほど知っていたから。



