「あれ? ならわたし別に、もうこの恰好してなくても……」
「仕事の説明に要る」
「バカなわたしでもわかるよ。別になくても問題ないよね」
「ここを乗り越えたらもう何着てても一緒でしょ」
そりゃそうかもしれないけどね? 着てなかったらお父様から冷たい目で見られることはなかったよ?
「まあ、そんなことはどうでもいいとして」
彼氏にどうでもいいとか言われたよ。
「挨拶も済んだし、もうそろそろ出ようと思うんだけど」
「あ! それ、ちょっと待ってくれない?」
「……ツバサ?」
「うん。まあいろいろお世話になっちゃったし」
それに、酔わせるほど迷惑かけちゃったわけだし。お薬とか、持って行ってあげた方がいいかなと思うんだけど。
「オレも、ちょうど今そのこと話そうとしてた」
「そうだったの?」
「ついでにあおいの仕事のこととか、今までの、こじれ~仲直りまでの経緯を逐一話してやろう」
「……ヒナタくんそれ、半分嫌がらせ入ってない?」
「何言ってんの、んなわけないじゃん」
「本当のところどうなの」
「半分どころか全部嫌がらせだよ」
「素敵な弟が持てて、ツバサくんは幸せだねえ」
その後、ワカバさんにお薬を戴いてからツバサくんの部屋へ。少し頭痛がするくらいだけどと、薬は飲んでくれたけれど、ヒナタくんがいざ話をし始めたら全力で遠慮された。
「お前、恩を仇で返す気か」
「だって知りたいと思って」
「聞かんでも十分だっつの」
「じゃあヒナタくんに、わたしがツバサくんの話をしてあげるね」
「え。何それすごい興味ある」
「ちょっと待て葵。お前何話す気」
「百合のパーティーの時にね? ツバサくんがはちみつレモン持ってきてくれたんだよー。いいでしょ」
「それ聞いたし」
「え! 嘘! ツバサくん話したの?」
「別に隠すほどのことでもねえだろ。つうか、それはそもそも」
「そっか。じゃああれは? ナンパに絡まれた時の話」
「ちょ、待て葵。それ以上は」
「……ナンパって何」
「日向、頼むからちょっと落ち着け」
「百合のパーティーでね、ちょっと声かけられちゃって。てへ」
「葵も。頼むからもうこれ以上何も」
「どういうことツバサ」
「そうそう! その時にツバサくんがねー」
「頼むからお前ら、もう俺を巻き込むな……!」



