すべての花へそして君へ③


「あれ? ならわたし別に、もうこの恰好してなくても……」

「仕事の説明に要る」

「バカなわたしでもわかるよ。別になくても問題ないよね」

「ここを乗り越えたらもう何着てても一緒でしょ」


 そりゃそうかもしれないけどね? 着てなかったらお父様から冷たい目で見られることはなかったよ?


「まあ、そんなことはどうでもいいとして」


 彼氏にどうでもいいとか言われたよ。


「挨拶も済んだし、もうそろそろ出ようと思うんだけど」

「あ! それ、ちょっと待ってくれない?」

「……ツバサ?」

「うん。まあいろいろお世話になっちゃったし」


 それに、酔わせるほど迷惑かけちゃったわけだし。お薬とか、持って行ってあげた方がいいかなと思うんだけど。


「オレも、ちょうど今そのこと話そうとしてた」

「そうだったの?」

「ついでにあおいの仕事のこととか、今までの、こじれ~仲直りまでの経緯を逐一話してやろう」

「……ヒナタくんそれ、半分嫌がらせ入ってない?」

「何言ってんの、んなわけないじゃん」

「本当のところどうなの」

「半分どころか全部嫌がらせだよ」

「素敵な弟が持てて、ツバサくんは幸せだねえ」


 その後、ワカバさんにお薬を戴いてからツバサくんの部屋へ。少し頭痛がするくらいだけどと、薬は飲んでくれたけれど、ヒナタくんがいざ話をし始めたら全力で遠慮された。


「お前、恩を仇で返す気か」

「だって知りたいと思って」

「聞かんでも十分だっつの」

「じゃあヒナタくんに、わたしがツバサくんの話をしてあげるね」

「え。何それすごい興味ある」

「ちょっと待て葵。お前何話す気」

「百合のパーティーの時にね? ツバサくんがはちみつレモン持ってきてくれたんだよー。いいでしょ」

「それ聞いたし」

「え! 嘘! ツバサくん話したの?」

「別に隠すほどのことでもねえだろ。つうか、それはそもそも」

「そっか。じゃああれは? ナンパに絡まれた時の話」

「ちょ、待て葵。それ以上は」

「……ナンパって何」

「日向、頼むからちょっと落ち着け」

「百合のパーティーでね、ちょっと声かけられちゃって。てへ」

「葵も。頼むからもうこれ以上何も」

「どういうことツバサ」

「そうそう! その時にツバサくんがねー」

「頼むからお前ら、もう俺を巻き込むな……!」