ものすっごいひっくい「は?」戴きました▼
ちょ、ちょっとちょっと。なんでご機嫌斜めなのさ。さっきまであんなに楽しそうに話してたじゃない!
「オレはただ、新年の挨拶も兼ねて、仲直りしたこととそれからお付き合いを許してもらいに来ただけだけど」
「へ?」
「だから、プロポーズはまだ気が早すぎ」
「そこまで、考えてくれてたの……?」
「ん?」
「きちんと、……しようと思ってくれたの?」
「真剣なんだから、きちんとしとくべきでしょ」
寒いだろうからと、自分のマフラーをわたしにそっと巻き付けてくれるけれど、今はもう、尋常じゃないほど暑い。特に顔が。
どうしよう。嬉しすぎて心臓がおかしくなる。
「で、でも、仲直りしたって、言ってないよ……?」
「言わなくても十分伝わってるよ。一緒に会いに行けばそれだけで」
「そ、そっか」
「うん」
恥ずかしさに俯くわたしの、マフラーからこぼれた一房の髪を、彼がそっと掬う。僅かに触れた耳朶が、一瞬で熱を持つ。
「……ごめん」
「な、何で謝るの……」
「別に、意地悪でそんな恰好させてるわけじゃなくて」
「……これが意地悪でないと」
疑問に思うわたしの手に、そっと彼の手が触れる。
触れた瞬間、驚いたわたしは慌てて顔を上げると、それだけで彼が今から何を言おうとしているのか、何となく予想が付いてしまった。
「緊張、マジでやばかった……」
「そんな風には見えなかったよ? ちょっと固いなーとは思ったけど」
「その恰好見れば、少し気が紛れるかなと思ったんだよ」
「……紛れたの?」
「まあ、結構」
「それなら……、よかった」
僅かに湿っている彼の手は、とてもとても冷たくて。まだ、未だに尋常ではないほど、震えていた。
「そういうことならお安いご用だ! ヒナタくんの緊張を和らげるためなら、こんな恰好へのかっぱだぜ!」
君だけ頑張るのは違うもの。わたしも、頑張るよ。ちょっと頑張り方違うけど。
「そ。じゃあ次は頑張ってね」
「おうともさ!」
「じゃあ帰ろうか」
「うん帰ろう!」
「オレんちに」
「そう! オレんちに……え。オレんち??」
ちょ、ちょっと待っておくれよ。確かにね? 確かに言ったよ? わたしも挨拶させて欲しいなって。
「だから言ったでしょ。頑張ってね」
「おうのおおおーッ!!」
でも違うから。タイミングは今じゃないから。
お願いだからこんな恰好で、彼氏んちにご挨拶とか本当やめて! 勘弁して……!!



