すべての花へそして君へ③


「……ばばあと、話してないわけじゃねーよ」

「ほら当たった」

「…………」

「……チカ?」

「なあヒナタ。お前自分の将来について考えたことあるか」

「あいつを娶る」

「ぶはっ。おま、もうちょっと言い方あるだろ……」


 噴き出した後ふうと一つ息を吐き出したチカは、真面目腐った顔つきで改めて問いかけてきた。


「自分だけの将来について。考えたこと、あるか?」

「……自分だけ?」

「そう」

「……ちょっと意味がわかんない」

「そうだよな。まあオレもそうだったんだけどよ」


 そこまで言って初めて、このことがフジばあと話したことなんだとわかった。
 きっとチカはオレらの中の誰よりも多く、自分の将来について家族と話をしたんだろう。


「ばばあがいつも言ってた。『いつ、あんたを一人にしてしまうかわからない』って」

「は? 一人になるわけないじゃん。オレがいるんだから」


 はっきりそう言ってやると、チカは目玉を落としそうなほど大きく目を見開いた。
 こいつもわかってなかったのかと思って、続けて言ってやる。


「ちょっとフジばあに言っといてよちゃんと。だから安心していつでもこっくり行きなって」

「おいおいおい。まだピンピンしてんだっつの。殺すな勝手に」


 けれど、それが相当可笑しかったらしい。暫くは笑いと、気管に芋が入ったらしく咳がうるさかった。


「はあーっ、けほ。……あー死ぬ」

「飲み物買ってこようか? あっついコーンポタージュかぜんざい、どっちがいい?」

「余計のど渇くからやめろ」

「人の親切無下にすると罰が当たるよ」

「お前のは親切じゃなくて嫌がらせなんだっつの」


 落ち着いてから、チカはゆっくりと口を開いた。


「……ま、だから置かれた状況に関してだけ言えば、今のお前と近えのかなって思ったのは確かだな」


 オレが怒るとでも思ったのか。少しだけ控えめに、申し訳なさそうに彼は話した。


「ばばあが言うには、オレの将来にはいつもばばあがいて、いつも優先してしまうって。だから一回、真っ新な状態で考えてみろって」

「……フジばあ抜きに考えろってこと?」

「オレもそう思った。でも、そういうことじゃないんだ」

「……じゃあどういうこと」