「……ばばあと、話してないわけじゃねーよ」
「ほら当たった」
「…………」
「……チカ?」
「なあヒナタ。お前自分の将来について考えたことあるか」
「あいつを娶る」
「ぶはっ。おま、もうちょっと言い方あるだろ……」
噴き出した後ふうと一つ息を吐き出したチカは、真面目腐った顔つきで改めて問いかけてきた。
「自分だけの将来について。考えたこと、あるか?」
「……自分だけ?」
「そう」
「……ちょっと意味がわかんない」
「そうだよな。まあオレもそうだったんだけどよ」
そこまで言って初めて、このことがフジばあと話したことなんだとわかった。
きっとチカはオレらの中の誰よりも多く、自分の将来について家族と話をしたんだろう。
「ばばあがいつも言ってた。『いつ、あんたを一人にしてしまうかわからない』って」
「は? 一人になるわけないじゃん。オレがいるんだから」
はっきりそう言ってやると、チカは目玉を落としそうなほど大きく目を見開いた。
こいつもわかってなかったのかと思って、続けて言ってやる。
「ちょっとフジばあに言っといてよちゃんと。だから安心していつでもこっくり行きなって」
「おいおいおい。まだピンピンしてんだっつの。殺すな勝手に」
けれど、それが相当可笑しかったらしい。暫くは笑いと、気管に芋が入ったらしく咳がうるさかった。
「はあーっ、けほ。……あー死ぬ」
「飲み物買ってこようか? あっついコーンポタージュかぜんざい、どっちがいい?」
「余計のど渇くからやめろ」
「人の親切無下にすると罰が当たるよ」
「お前のは親切じゃなくて嫌がらせなんだっつの」
落ち着いてから、チカはゆっくりと口を開いた。
「……ま、だから置かれた状況に関してだけ言えば、今のお前と近えのかなって思ったのは確かだな」
オレが怒るとでも思ったのか。少しだけ控えめに、申し訳なさそうに彼は話した。
「ばばあが言うには、オレの将来にはいつもばばあがいて、いつも優先してしまうって。だから一回、真っ新な状態で考えてみろって」
「……フジばあ抜きに考えろってこと?」
「オレもそう思った。でも、そういうことじゃないんだ」
「……じゃあどういうこと」



