そのあと、根掘り葉掘りと問い質されたのは言うまでもない。


「何いちゃついてんの」

「い、いちゃついてないよ!?」

「オレの兄ちゃん勝手にとんな」

「それについてはごめんちゃい」


 因みに風邪は、子どもから溶連菌ももらっていたみたいで。面会謝絶ほどになってしまった背景に、実はそれも絡んでいたのでした。
 まだ子どものことは話せなかったので、一応伏せておいたけれど。だからもう、治りが遅くて遅くて。


「無理をしたのが一番の原因だから」

「それでも無理をしたかったのが本音です」

「それで倒れたら本末転倒でしょ」

「それでもって言ったら、怒る?」


 わかっていて、それでも聞かずにはいられなかったわたしの質問に、彼は一度だけ小さく目を瞠った。
 そして、それには何も答えず。ただ優しく笑って、わたしの頭をそっと引き寄せた。

 その行動に驚いていると、彼の指先が優しく髪を梳いていく。


「さっきので……よかった?」

「……え?」


 不安に揺れる声に、そっと見上げる。けれどその瞳は、不安に揺れるどころか真っ直ぐに前を見据えていた。


「今のオレはまだ何も完璧にはできない。あんたがいる場所になら、どこへだって行きたい気持ちだってある」

「そう思うなら来ていいんだよ」

「……ちょっと、言ってることが前と違う」

「そうじゃなくてね? 君は、君の信じた道を行けばいいって。ただそれだけが言いたくて」

「……」

「大丈夫だよ、ヒナタくんは間違ってない」

「あおい……」

「誰かがそれを否定しても。わたしは君が正しいって、そう思ってるよ。胸を張って言える」


 彼の手を握り、下りてきた視線を見つめ返す。この想いが真っ直ぐ、届くように。


「……」


 けれど、彼はただ目を瞠っていただけだった。


「……はっ! あ、愛が重かった!?」

「え」

「わああ! わたし、別にヒナタくんに責任を押しつけたかったわけじゃなくて」

「……」

「ただ大好きすぎるだけなんだよおお!」

「う、うん。知ってるから」

「重荷になってない?」

「寧ろもっとくれてもいい」

「……? 何を?」

「愛を」


 驚いていた彼はどこへやら。何か、点と点が結びついたような。重なったような。すっきりした面持ちで今は、ただ嬉しそうに笑っていた。


「どうしたの」

「へえっ!?」

「顔真っ赤だけど」

「!?!?」