「――それでねそれでね? 目の前にバナナ落ちてて、案の定すっころんじゃったのよ。それで治療費云々の問題でゴタゴタしてて」

「……」

「そんなのマ〇カだったらどれだけ発生するのかって話だよねー」

「あのさ、一言物申すんだけど」

「ん?」

「仕事服。どうなの、あれ」

「はっ!? み、見ちゃった?」

「見ちゃった」

「やだー! 全部解決したら見せようと思ってたのにー!」

「……」

「あ! 因みに、現在サスペンダーを制作中です。海棠ブランド」

「どこで使うんだよ……」


 だがしかし、強く言えないのは自分も同じようなことをしていたからだろう。因みに蝶ネクタイは彼のお古だ。


「それで次はねー」

「あのさ」

「ん?」

「ここのこと、もっと聞きたいんだけど」


 まだまだ未解決事件の解決は、山のようにあるけれど。それについては、彼はもう満腹のようだ。
 東の方は、もうだいぶ白んできていた。


「ここは、あの子たちの家であり、お互いが友達であり、そして家族なんだ」

「それで、あんたはここのシスターと」

「そうなんだよー。似合ってないのはわかってるんだけどー」

「ふーん」


 ポリポリと頬をかく。今ではもう慣れたもんだが、はじめはシスターと、そう言われるだけで気恥ずかしくなったものだ。
 苦笑いしていると、隣に座っていた彼がもたれ掛かかりながら下から覗き込むように見上げてくる。そして、ふっと楽しそうに笑った。


「似合ってないことないんじゃない?」

「え? そ、そう?」

「まあ、シスターの服堂々と着てたら笑ってたかもしれないけど」

「上げてから落とさないで」

「でも似合ってる。というか想像できる」

「……? 何を??」

「子どもに囲まれてるあおい。精神年齢近いから、一緒に遊んでても違和感ないだろうし」

「……ねえ、やっぱり貶してない??」

「でも、勉強教えてるのとか、多分様になってるだろうし、楽しそうな雰囲気わかるよね、見てなくても」

「…………」

「絵本とか読んでそう。それに群がる子どもたち」

「……えと。あ、ありが、とう……?」


 反応に困りながらもお礼を言うと、思ったことを言っただけだよと、どこかおかしそうに彼は笑う。
 けれどやっぱり、立ち入って聞くことはしなかった。その優しさがなんだか、すごくむず痒い。


「あ、あのですねヒナタくん」

「でも、よく身が持ったというか何というか」

「え?」

「あんなことやこんなことをしていた挙げ句、終いには調書? 巫女のバイト?」

「……えーっと」

「んでもって、ツバサとデートして腹出して寝て風邪引いて? 罰が当たったんだよきっと」

「え!? そんなことまでマザーから聞いたの!?」

「違え。ツバサから」


 あ、まあそうだよね。流石にそこまでマザーが知っているはずは……。


「え。ツバサくんから聞いたの?」

「ええ」

「ほ、他に何か聞いたの」

「何か不味いことでもあるのかな?」

「あ、ごめん。やっぱ今のなし」

「吐け」