このあとどう来るのか。オレはいやと言うほど知っている。
「取り敢えずさ、ひーくんあーちゃんと話した方がいいって」
「わかってる」
「なら頑張って連絡取ってみなよ」
「そう、だね」
それが、できればいいのにね。
どうしてか、もう一回の連絡を、入れることができない。重くなってしまった腰が、上がってくれない。できれば、オレだってこんなに苦労してない。悩んでない。
「いいんじゃね、別に」
だから、そう言われた時どう反応すればいいかわからなかった。
「ちーちゃん! なんでそんなこと言うの!」
「耳にタコなんだよ」
「え? どういうこと」
「当人たちの問題だってこと。オレらが何か言ったところで変わるもんじゃねえだろ」
それでもと。こうした方が、ああした方がと言うオウリの文句を一つも嫌がらず、チカは一言一句聞いていた。
そんな二人の様子を横目に、オレは抹茶パフェに逃げた。
今まで一度も見せなかった彼の一面に、正直言葉が見つからなかった。対応の仕方が、わからなかったんだ。
「……お前らまた入り浸ってたのか」
「お、ユッキー。はよー」
「れんれん? ……はっ! 今何時!?」
「今? ……4時半前だけど」
「あー! あかねに怒られるうー!!」
「「……アカネに??」」
一番怒りそうのない人物の名にオレらは首を傾げたけれど、叫んだ当の本人は血相を変えて店から出て行った。
あんなにオウリが怖がるくらいには、アカネも怒ると怖いらしい。
「……そういえば、今日夕方から道場の方に呼ばれてるっつってたな」
一緒に子どもたちの稽古を見て欲しいとか何とか……と、チカは残っていたミックスジュースを勢いよく飲み干す。
「……稽古か」
「レンは時間の無駄だと思うよ。それするくらいなら女に生まれ変わった方が早いと思う」
「うるさい。わかっている」
「ユッキー。ここは一応否定しとくかキレとこうぜ」
そして完全に飲みきったチカは、伝票をレンに渡した。
どうやら彼も、もう家に帰るらしい。
「チカ」
「割り勘な」
「え?」
「こういうのは大人になってからでいいんだよ」
そう言いつつ、帰ったオウリの分まで出したチカには、有無を言わせぬものがあった。
まあ、ミックスジュースと抹茶パフェは、やっぱりオレ持ちだったけど。
「じゃあなユッキー」
「また来るね」
「毎度どうも」
大人への一番乗りはこいつだろうと、なんだかんだで思ってはいたけれど。正直、置いていって欲しくないなと寂しく感じている自分がいて、彼の見えないところでオレは小さく笑っておいた。



