すべての花へそして君へ③

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『子ども……ですか?』


 わたしについて、ある程度の報告がいっているのなら、その答えがどうなるのか、目の前のこの人は訊かずともわかっていたはずだ。それを、改めて問うということは。


『それが、条件ということですか』

『似ても似つかぬがな』

『へ?』

『適任者というわけだ。お前が一番』

『単に人手不足というわけじゃ』

『無きにしも非ず』


 ちょっとはあるんかいな。
 けど、子どもに関する条件って、一体……。


『所謂、事後処理の延長線だ』

『え?』

『結論から言う。逃亡者を保護して欲しい』

『とっ、逃亡者の、保護……?』

『……』

『……もしかして』


 彼は何も言わず、ただ瞳を閉じている。ということは、わたしの嫌な予感は、見事当たってしまったというわけだ。
 何とも醜い謀略か。何とも腹立たしい異心か。


(……あれ? でも逃亡って……)

『熱くなっているところ悪いが』

『あ、はい』

地下(、、)に残っていた者はほぼ、無事に保護している』

『ほぼ?』

『言っただろう。適任者だと』

『……と、言いますと』


 わたしのこの問いは、どうやら地雷だったらしい。


『聞き取りした情報によると国内のみならず、どうやら国外にまで逃亡した阿呆がいるらしい。貴様のように狡賢い糞餓鬼どもがいるようだ』

『誰がくそガキですか……!』


 完璧に当て付けである▼
 こめかみに立った青筋が少し和らいだ頃、小さく続きが話された。


『そいつらの保護を。管理は他の者に任せている』

『そうは言いますけど』

『誰も、未成年一人に任すとは言っとらん。後で雨宮か東條を付ける予定だ』

『どうして、それをわたしに?』

『適任だからだ。よっぽど……』

『……? よっぽど?』

『どっかの強面のおっさんどもが行くよりは』

『……あは』


 どうやら、何度か子どもに泣かれたらしい。その場面、ちょっと出会してみたかったかも。


『適任だろう。一人で何十もの教養が、お前にはできるのだから』


 けれど、そうして笑っているのも束の間。そうして目の前の人は、少し意地の悪い顔をして言い放ったのだ。