『ははっ。すごい無茶苦茶……!』
けれど、どこか潔すぎて気分がいい。そういうの、本当大好きっ。
『はあ。……いいでしょう、やりましょう?』
寧ろ、願ったり叶ったりだ。自分の尻は、自分で拭いてやりますよ。
『先程言ったな。期限がわからないのではないかと。全くもってその通りだ、お前がいつ、未解決の事件を解決してくるのか、流石の私にも見当がつかん』
『あら。事件の解決はできると、そう思ってくれてるんですね』
『言ったろう。力は買っていると』
(……あ。デレた)
僅かに視線を落とした彼の、ちょっとした変化に喜んでいるのも束の間。追加で広げられた資料に、わたしは思わず眉を顰めた。
『事は内密に動き、既に収束している案件だ。だが、お前は知っておいた方がいいだろう』
書かれていた内容に、腸が煮えくり返るような思いが全身を駆ける。
『事は未然に防がれ、捜査本部はもう解体している。君や君の周りの力があったからだ。気に病む必要はない。というか君とはほぼ無関係だったことだ。気にするな。気にして何かいいことでもあるのか。ならば是非とも教えていただきたいものだな』
これは、この人なりの慰めのつもりか。人を褒めることも慰めることも、てんで下手糞なのかこの人は。
『……そう、ですか』
でも、だから素直に頷ける。
わたしへの贖罪が全くなかったことも。もしモミジさんが生きていたとしても、罪状は考え得るよりも遙かに軽いことだろうということも。
そこに書き切れないほどの異図。何もかもを巻き込んだ畏怖の塊。
その、一欠片……いや。微塵でしかなかったのだ。わたしたちは。
『はい。わかりました』
立っていられないほどの慄然。
もし、計画を遂げてられてしまっていたらと。考えるだけで、全身の血の気が引く。
『……全てを語る趣味はないと言ったが』
『はい?』
『ただの女子高生の理解力がそこまでとは、正直好かん』
『へ』
『可愛げがない』
『……』
『色気もない』
『それ絶対今関係ないですよね!?』
【――これらは、既に収束している案件】
そんなふざけた叫び声と同時、先程の言葉が頭の中で反響する。
【道明寺の計画は、その一部にも満たない】
【事は未然に防がれ、捜査本部はもう既に解体をしている】
“――だが、お前は知っておいた方がいいだろう”
嫌な予感がしたのか、目の前の人は先回りをするように大きなため息を吐いた。
『残花の始末は我々の仕事だ。手出しはさせん』
『けれど、わたしも無関係というわけには』
『何処まで首を突っ込みに来るつもりだ。人の尻まで拭く趣味があるのかお前は』
『そういうわけでは……』
『私は“知っておくように”と伝えたはずだ。気付くなら、その最後まで理解しなさい』
『……すみません』
未解決事件を担当するのであれば、“その可能性”が、ないわけじゃない。
(あるとすれば接触は、少し先か――……)



