すべての花へそして君へ③

 ――――――…………
 ――――……


『……え。それが、わたしの仕事なんですか?』

『何だ、嫌か。ならやめるか』

『い、いえ! そうではなく……!』


 ――高校卒業まで待たなくていいのなら話は早い。元よりそのつもりだったからな。


『……そうでは、なくて……』


 ――お前には、件の事件。その事後処理を一任する。


 真っ直ぐ向けられた視線。取りようによっては睨まれていると思っても仕方がないほどの威圧感。まるで蛇に見込まれた蛙にでもなった気分だ。


『……その、事後処理というのは』


 背中に冷や汗を流しながら、それでもその視線は決して外さない。
 事前に聞いていた話と、仕事の内容が違うわけ。今外せばもうきっと、この人の考えは見えない。わたしはその奥の、貴方の本心が……見てみたい。


『言葉のままだ』

『その言葉が足りてないの、自覚ないんですか』

『だったら私は、どうやら人選を間違えたようだな』

『え……?』

『生憎、全てを語る趣味はない。貴様のようにな』

『……』

『それが嫌なら掻き集めろ。得意なのだろう?』

『得意って……』


 もしかして、理事長の願いを叶えていた頃のことを言っているのだろうか。だからって、あれはちょっとイレギュラーというか……。
 情報を集めたとしても高が知れている。というか、恐らくは無理だ。

 今のわたしが持っているのはせいぜい、ヒナタくんやモミジさんが話してくれた内容だけ。それから推測をするにしても、情報量が少なすぎる。正直打つ手がない。


(……あれ、でも待って)


 この人は、それを気付けと言っている?
 じゃあもしかして、これは、“誰も知らない”こと……?


『……ふっ』

『え』

『悪かった。つい、意地の悪いことをした』

『……』


 確実に見えた本心は、少々ねじ曲がっておいでだった。


『そこまでわかれば、十分合格点だ』

『そこまでって、何がですか』

『今、気付いたんだろう。顔に出やすいから気を付けなさい』

『……』


 ああ、この人はすごい人だ。わたしの……まだ先をすぐに行ってしまう。
 気持ちのいい敗北感を味わっていると、ガラガラと音を立てた引き出しから出てきた資料が、机の上に広げられた。


『結論から言おう。お前に、信用の回復を任せたい』

『――――』


 資料に書かれていた統計。数字は半分以下に減少し、グラフは急激な右肩下がり。
 国内外における、評価。向けられていたのは、冷酷。疑心。不信。


『生憎、私は嘘が一番嫌いでね』


【肩代わり】
 本来なら、生きていたなら、これをモミジさんにもさせるつもりだったのか。


(……いや、彼は今、嘘が嫌いだと言った)


 なら、モミジさんがもし生きていたのなら、きっと彼女はもう一つの選択肢――独房の中だ。
 彼女が死んだ人間だったから、今わたしは新たな選択肢を与えられる機会を設けられ、現にこうして、仕事を振られている。


『……未解決事件、というのは』

『手っ取り早いだろう』


 ガタ落ちした、信頼。
 それを回復するために、存分に利用しろと。……貴方は、そんなことを仰るのか。