すべての花へそして君へ③


「今日はあおの隣で食べる」

《こら。今は英語で話す時間》

「隣行ったら話す」

「もう、仕方ないなあ」


 そしてどうやら、その嫌な予感は的中したらしい。
 そうおねだりしたのは、先程も邪魔をしてきた男の子。子どもと言っても、それなりに大きいから小学校高学年か中学生くらいだろう。あおいより少し低いくらいだ。
 その子と目が合うと、一度じっとこちらを見てきてから、すぐぷいっとそっぽを向かれる。これで何度目だろうか。


《はい! それでは皆さんご一緒に!》

《いただきまーす!!!!》

(いただきます)


 それからは、いろいろ大変だった。食事の時は……。


《ねえねえシスター! 今日お兄ちゃんが来てくれてよかったね! ごはんがいつもよりおいしいね!》

《うんそうだね》

《でもシスターちょっと元気ない?》

《え?》

《あ、そういえば顔、ちょっと赤いね! 風邪かなあ》

《えーっと、大丈夫。わたし滅多に風邪なんて引かないから》

「シスターの顔が赤いのはお兄ちゃんのせいだよ」

「「「え?」」」

「こ、こら」

「ねえ、お兄ちゃん?」

「……ま、そう言われたらそうかもね」

「「「え??」」」

「ちょ、ちょっとヒナタくんまで悪乗りしないで」


 食事が終わった後。みんなで片付けしている時なんかは……。


「ねえねえおっきいお兄ちゃん!」

「ん? どうしたの」

「お風邪ね? みんなにうつしちゃ大変だから」

「……マスク?」

「いろいろ予防になるから渡しておいでって! さっきちっちゃいお兄ちゃんが言ってたの! えらい?」

「うん、えらいえらい」


 ――――――…………
 ――――……


「……あれ? ヒナタくんどうしたの? 風邪引いた?」

「欲求不満の彼女から唇を守っている」

「え、ええ!?」

「お兄ちゃん、“よっきゅうふまん”ってなあに?」

「ん? それはだね」

「ひ、ヒナタくんストップ……!」


 そしてお風呂の時は――――。


《それでは! 冷めてしまう前にみんなでテンポよく入りましょうねー!》

《はあーい!》

《お姉ちゃんたちお兄ちゃんたちは、ちっちゃい子と一緒に入ってあげてねー》

「ねえあお」

《こーら。今はドイツ語の時間》

「あおはおっきいお兄ちゃんと一緒に入るんだよね」

「へっ!?」

「俺ら早く上がってくるから、後でお兄ちゃんとゆっくり入ってね」

「は、入りません!」

「……あれ? もしかしてまだ一緒に入ったことないの?」

「黙秘します」

「そうなんだー。お兄ちゃん、残念だったね。あおのおっぱい」

「いや、普通に入ったことあるよね?」

「ひ、ひなたくんっ!?」

「一度と言わず、二度三度。おっぱいだって幾度となく揉」

「教育的指導入ります!! ヒナタくん、ちょっと来なさい!!」