「今日はあおの隣で食べる」
《こら。今は英語で話す時間》
「隣行ったら話す」
「もう、仕方ないなあ」
そしてどうやら、その嫌な予感は的中したらしい。
そうおねだりしたのは、先程も邪魔をしてきた男の子。子どもと言っても、それなりに大きいから小学校高学年か中学生くらいだろう。あおいより少し低いくらいだ。
その子と目が合うと、一度じっとこちらを見てきてから、すぐぷいっとそっぽを向かれる。これで何度目だろうか。
《はい! それでは皆さんご一緒に!》
《いただきまーす!!!!》
(いただきます)
それからは、いろいろ大変だった。食事の時は……。
《ねえねえシスター! 今日お兄ちゃんが来てくれてよかったね! ごはんがいつもよりおいしいね!》
《うんそうだね》
《でもシスターちょっと元気ない?》
《え?》
《あ、そういえば顔、ちょっと赤いね! 風邪かなあ》
《えーっと、大丈夫。わたし滅多に風邪なんて引かないから》
「シスターの顔が赤いのはお兄ちゃんのせいだよ」
「「「え?」」」
「こ、こら」
「ねえ、お兄ちゃん?」
「……ま、そう言われたらそうかもね」
「「「え??」」」
「ちょ、ちょっとヒナタくんまで悪乗りしないで」
食事が終わった後。みんなで片付けしている時なんかは……。
「ねえねえおっきいお兄ちゃん!」
「ん? どうしたの」
「お風邪ね? みんなにうつしちゃ大変だから」
「……マスク?」
「いろいろ予防になるから渡しておいでって! さっきちっちゃいお兄ちゃんが言ってたの! えらい?」
「うん、えらいえらい」
――――――…………
――――……
「……あれ? ヒナタくんどうしたの? 風邪引いた?」
「欲求不満の彼女から唇を守っている」
「え、ええ!?」
「お兄ちゃん、“よっきゅうふまん”ってなあに?」
「ん? それはだね」
「ひ、ヒナタくんストップ……!」
そしてお風呂の時は――――。
《それでは! 冷めてしまう前にみんなでテンポよく入りましょうねー!》
《はあーい!》
《お姉ちゃんたちお兄ちゃんたちは、ちっちゃい子と一緒に入ってあげてねー》
「ねえあお」
《こーら。今はドイツ語の時間》
「あおはおっきいお兄ちゃんと一緒に入るんだよね」
「へっ!?」
「俺ら早く上がってくるから、後でお兄ちゃんとゆっくり入ってね」
「は、入りません!」
「……あれ? もしかしてまだ一緒に入ったことないの?」
「黙秘します」
「そうなんだー。お兄ちゃん、残念だったね。あおのおっぱい」
「いや、普通に入ったことあるよね?」
「ひ、ひなたくんっ!?」
「一度と言わず、二度三度。おっぱいだって幾度となく揉」
「教育的指導入ります!! ヒナタくん、ちょっと来なさい!!」



