すべての花へそして君へ③


「ヒナタくん覚えてる?」

「ん?」

「わたしが、世界で一番の幸せ者にしてあげるって。覚悟しといてねって、言ったこと」

「んー、そんな可愛い言い方ではなかった気がするけど」

「それは、その前に泣かす方が悪いのでは?」

「泣いた方が悪いんだよ」


 素直になれないオレに、彼女はクスクスとおかしそうに笑う。
 そんな彼女を見てオレも思い出す。


「見られるよ。絶対。きっとすぐそこにあるよ」

「そっか」


 オレたちの始まりの夜のこと。あの時君に伝えた、真っ直ぐな気持ちを――。


「…………」

「……?」

「あれ。え? 今じゃないの?」

「今って何が?」

「何がって、プロポーズだよ! それっぽい話してたじゃん!」

「だから、何回も言うけど、オレまだ高校生」

「歳なんて関係ないよ!」

「歳は関係ないかも知れないけど、時と場所とタイミングは関係あるでしょ」

「今絶好だったじゃない!?」

「そう思ってるのはあんただけだよ」

「え。本気で言ってる?」

「ええ、そうですね」


 再びガーンと、割と本気でショックを受けている。どうやら、今のタイミングで言っていたら、即刻OKをもらえていたらしい。


(……ま。言えるもんなら、今すぐにも言いたいところだけど)


 君が君ですることがあるように。オレにもオレで、きちんとしておきたいことがありますから。
 そんな彼女に、小さく笑いながら。愛おしい君にそっとキスをしようと、頬に手を伸ばしたところで。


「あお、こんなところにいた」

「「――!?!?」」

「みんなご飯待ってるよ」

「ご、ごめんね! 行こう! すぐ行こう!」

「うん。あ、あとね」

「ん? 何かあった?」

「子どもの俺が言うのもなんだけど、いちゃつくのも時と場所と体裁、それから教育面。考えてよね」

「……はい」


 伸ばそうとしたところで邪魔が入ってしまった。どうやら今日のオレは、いろいろとタイミングが悪いらしい。はあ。