「あのな、『別れ話をした』っていうのは、出出しでも過程でもなく最終的なところに持ってくるんだよ。結論がわかったからオレはもう帰る」
「だから待ってって」
「おれも右に同じ。ひーくん出しといてね」
「オウリも待ってって。お金はオレが出すから、だからせめて、最後まで聞いてよ」
何とか引き留めたその後、あれやこれやと言っている間に追加の注文もされてしまったけれど、ここは目を瞑ることにした。
話を聞いてもらえる状況になったんだ。まあ、安いもんだ。
「結論から言えば、オレが弱かったの一言に尽きるよ。完全に別れるつもりは毛頭なかったけど、一度でもあいつと距離をとったんだから」
二人は、来たミックスジュースと抹茶パフェを美味しそうに食していたが、オレにくれる気は全くなさそうだった。
それでも、二人の満足そうな笑みを横目に、オレは話を続けた。
「オレはたださ、死ぬまでずっと、あいつの隣にいたかっただけなんだ」
「え? ひーくん知ってる? 別れたら元も子もないんだよ?」
「そういう結論に至った理由が、ヒナタ側の問題じゃなかったからだろ」
それに頷くように、オレは一度ゆっくりと目蓋を下ろした。
そして。自分のわかる範囲内で、今彼女が何をしているのか。どういう状況に置かれているのか。その話を、彼らにもすることにした。
結果から言えば、分けてもらえたミックスジュースと抹茶パフェは、傷だらけの心と体に十分と染み渡った。
「ウマ過ぎでしょこれ。また食べに来よ」
「おれの分まだ残しといてよ!」
「おいヒナタ。話はまだ終わってねーだろ」
「自分でもう一個頼めばいいじゃん。オレのお金なんだから、どうしようと勝手でしょ」
「人のお金だから人一倍美味しいんじゃな~い」
「お前ら話する気あんのか」
でも話せと言われても、現状何をしているのかオレさえ教えてもらえてはいないんだ。これ以上どう話せと。
「今のお前とあいつの関係は。どうなってんだよ」
「別れてはないよ」
「そう思ってるのひーくんだけかもよ?」
「偉く突っかかってくるじゃんオウリ」
「でも、正直なところわからないんだろ?」
「わかるよ」
「アオイが今、仕事をしてるのがそうだって言ってるんだろ? でも話をしたわけでもないし、どういう意図があって仕事をし始めたかはお前もわからない」
「……そうだね」



