絶妙なタイミングで現れやがったな、プライド玉砕兵器め。
「ね、マザー。やっぱり口悪いでしょうヒナタくん」
「うちの旦那も似たようなものよ」
(……あれ。愛情表現ストレートって言ってたのに)
「それはそうと、二人とも。もうすぐご飯ですよ! 誰が呼びに行くかって揉めそうになったので、よーいドンでわたし一番!」
「ありがとう葵ちゃん。すぐに行くから、盛りつけもみんなでお願いしてもいいかしら」
「了解シチューonライスぅううー!」と叫びながら再び彼女は部屋を出て行った。メニューはわかったけれど、本当、忙しない奴。
「ふふ。よっぽど日向くんのこと、大好きなのね」
「今のどこをどう取ったらそうなりますか」
「わかるわ。確かに、いつもあんな風にみんなを笑わせるためか素か、楽しいことを沢山やったりするけれど」
(たぶん素だと思いますよ)
「それでもね? いつもちゃんと“お姉さん”をしてくれるのよ。今もしているけれど、それでもいつもよりも幾分気が抜けている。それに楽しいって、嬉しいって、体から溢れてる」
「……オレには、いつも通りに見えますけど」
でも、それがもしオレだけの前だとしたら。……何だろうかこの、ちょっとした特別感というか、独占欲というか。
「ねえ日向くん。さっきの後者って?」
「え? それは……」
「その顔で十分よ。ご馳走様」
「…………」
「私とのお話、楽しかった?」
「そうですね、それもありますけど嬉しかったです」
「あ、どの辺が?」
「お互い、結構何も言わなくてもわかり合ってることが多いんですけど……」
今日彼女と話せてよかった。きっとあいつは、ここまで教えてくれるつもりはなかっただろうから。
「……改めて、知れてよかった? 葵ちゃんの気持ち」
「はい」
「でも、私は予想だと言ったはずだけれど?」
「それでも、何となくそうなんじゃないかなって思うので」
「……そっか。でも、今日話したことは」
「はい。わかってます」
だからオレも、やっぱりあいつしかいないんだって。……あおいが心底好きなんだって、改めて実感したんだ。
「ねえマザー。マザーの旦那さんって、どんな人?」
「ん? そうね。一言で言うと面倒くさい人」
「え」
「愛情表現が真っ直ぐでも、それまでが全然ダメなのよ」
「だ、ダメ……」
「大事なことを抜いて話すの。あれはもうたぶん癖のようなもので、話すことを何故か照れくさいとでも思っているのね、きっと」
「あ、愛情は、ストレートなのに」
「ダメダメでしょう? ほんと、葵ちゃんのことがいい例よ」
あおいが? 何がいい例?
「私が貴方に話したこと全部。そういうことを抜いて話してしまうから、相手は誤解するし不安になったりするじゃない?」



