「それから、あともう一つのもやもやね」
「え? もう一つ?」
「そう。事後処理のこと」
「それはあの時の事件の」
「それが、あの子たち」
「え」
「子守が、事後処理」
「…………」
そこまで言われたらもう、何をどう言ったらいいのかわからなかった。
……ただ。だからあいつはあの時、オレにそう伝えたのかもしれない。
【ここが、ボーダーラインだ。ヒナタくん】
オレは、取りこぼしたのか。すくい、切れていなかったのか……?
『君が知り得なかった事が、もしかしたらこの先にあるかもしれないと知ったら――』
オレは、言葉が、出てこなくなった。
「……ふふっ」
黙ってただけなのに笑われた▼
「あ、ごめんなさい。不謹慎だった?」
「……いえ」
「どうして笑ったのか知りたい?」
「……そうですね、できれば」
「愛されてるなと思ったの」
「……え?」
「貴方が。葵ちゃんから」
「……」
いつの間にか、湯飲みはティーカップに変わり、中身は紅茶になっている。それほど、動揺していたのだろう。
「話すことを許可されていなくても貴方をここに連れてきたのは、きちんと話す決意が固まっていたから」
「……」
「それでもなかなか話せなかったのは、優しい貴方にそんな顔をさせたくはなかったからね」
「……オレは」
「それと、立てたかったのかもしれないわね」
「……何を」
「貴方を」
「オレを?」
意図していることがわからずにいると、またマイペースに彼女は聞いてきた。
「ねえねえ日向くん。葵ちゃんの巫女さん姿見たことある?」
「……ないです」
「あらそうなの? じゃあこれね」
「……」
図らずも、こんなところで巫女さん姿の写真がゲットできるとは▼
「可愛いわよね。とっても似合ってると思わない?」
「……はい」
「そうよねそうよね! 浴衣は? 葵ちゃん浴衣着たことあるの? 日向くん見たことある?」
「ありますよ。浴衣もよく似合ってました」
「そうなのね! だったらきっと、着物も似合うだろうなー」
「……あの、楽しそうなところ申し訳ないんですけど」
「ん? あ、その写真欲しい? 隠し撮りだけどいいわよ。焼き増ししたらあげる」
「ありがとうございます……って、そうじゃなくて」
「とっても大和撫子だと思わない? 葵ちゃん」
「ハイ?」
頭がだいぶ混乱しているせいか。どうやら、オレの脳味噌か耳が、ぶっ壊れたらしい。あおいが、大和撫子?
「すみませんそれだけには賛同しかねますほんとごめんなさい」
「え? そう? 何故?」
「少年探偵的な恰好している奴が大和撫子だなんて到底思えないんですけどオレ」
「そこは唯一取ってはいけないところよ日向くん」



