こんな場所に、これだけたくさんの子どもたち。あおいや神出鬼没のあの人が関わっていることもあるし、きっと彼女も“訳有り”なのだろう。
「初めまして。よろしくお願いしますマザー」
「はい、よろしくお願いします」
「えー。もうちょっとネイティブー」
「それはここぞという時に」
「ここぞとはどこぞ?」
「さあ? 新婚旅行あたりじゃない?」
「だ、だいぶ気が早いんでないかい??」
「何照れてんの」
「て、照れてない」
「わかったわかった。嬉しかったんだねーはいはい。今からでも行き先考えときなよ」
「ちょ、ちょっとヒナタくん。冗談もほどほどに」
「多分、冗談だと思ってないのあんただけだよ」
「へ? え。冗談……」
「うん」
ずーんと見るからに落ち込んでいる様子の彼女を見下ろしていると、隣からハッと声が上がる。
「大変、もうこんな時間! 葵ちゃん、申し訳ないのだけれど夕ご飯のお手伝い、お願いしてもいいかしら」
「はっ! も、もちろんです!」
というかそのつもりで来たのでと、あおいはオレにあっかんべーとしてから部屋を慌てて飛び出していった。見るからにここが台所のようだけれど、材料でも取りに行ったのか。
「それで? 新婚旅行はどこにしようと思ってるの?」
「彼女の行きたいところならどこへでも」
退屈にでもなったのか。いつしか彼女に抱かれていた子どもも部屋を飛び出していった。彼女曰く、あおいのところに行ったんだろうと。
どうやらあおいは、ここでも大人気らしい。子どもたちの表情がそれを物語っていて、オレも喜びを隠しきれずにいた。
彼女が出してくれたお茶に、何口目かの口をつけた頃。
「……あはっ」
「え?」
「いえ、ごめんなさい。ちょっと思い出し笑い」
(……そんなにさっきの遣り取りがおかしかったのかな)
オレとあおいにとっては、あんなの日常茶飯事だし。つうと言えばかあと答える、そんな感じなのだけど。
「いえね? うちの旦那なんだけど」
勘違いも甚だしかった▼
「彼、愛情表現がそれはそれはストレートで」
「は、はあ……」
「それで、嘘は絶対言わないのよ」
「……ふむ、オレとは真逆だと」
「まあ、隠し事はちょっとあるみたいだけれど」
「……隠し事?」
それがわかっているのに、彼女は旦那さんに何も聞かないのだろうか。
「彼がそうなのはきっと、私の体質も関係しているのだろうけれど」
(体質……?)



