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どこから嗅ぎ付けたのか。扉を開けると、それは雪崩れ込むように押し寄せてきた。
「ええっ? いったい何人いるの……」
正確に言うと押し寄せてきたのは十人ちょっとだったけれど、大部屋の中にはそれ以上の、年齢がバラバラの子供たちが大勢いた。
予想を遙かに上回った人数に驚きを隠せないでいたけれど、隣の彼女はというとまるでドッキリが大成功したような、そんな楽しそうな笑顔を浮かべていた。
そのまま彼女は、小さく咳払いをして話し始める。
《皆さん、お行儀が悪いですよ》
《はーい、ごめんなさいシスター》
(し、シスター……)
《今日はお客様がいらっしゃいます。皆さん、ご挨拶は?》
《こんにちはー!》
「えっと。……Good afternoon」
いろいろ突っ込みどころは満載だったけれど、ひとまずはそのキラキラした幼い視線に、戸惑いながらも返事をしてみる。不安げに隣へ視線を送ってみると、小さく微笑みと頷きが返ってきた。どうやら合っていたらしい。
安堵の息を洩らしているのも束の間、何の合図もなく続けて彼女はマイペースに大きく手を広げやがった。
「ア~ンド! ア、ハッピーニューイヤー!!!!」
「あ、はっぴーにゅーいやー!!」
「う、わあ……っ!」
もう待ちきれなかったのだろう。初めから、うずうずしていたのは何となく気付いてたし。
新年の挨拶とともに再び飛び付いてきた子どもたち。それはもう、オレにも容赦なかった。
「だっこおー!!」
「ん? オレ?」
彼女でなくていいのか。おねだりしてくる子どもに聞き返してみるけれど、「うんうん!」と言いながらオレの返事も待たずよじ登ろうとしていた。
高いところに登りたいのか。隣の小さな彼女の方をちらりと確認してから、その子をゆっくりと持ち上げる。
「ごめんね、ヒナタくん」
けれど、彼女はそのオレの視線を少し勘違いしていたらしい。早速、人が多いところに連れてきてしまったと、不安になっているようだった。
子どもを抱え直し、そんな心配性の彼女にぎこちなく笑いながら、一度ゆっくり首を振った。子どもなら問題ない。寧ろ最近子どもが可愛く思えてこれでもちょっとはしゃいでいたりするのだ。あんまり言うと、彼女の反応が今後恐ろしいことになりかねないので、敢えて言わないでおくけど。
そんなオレの様子に、彼女も安心したのだろう。だったらと、次は先程一緒に持ってきた段ボール箱を、バリバリ音を上げながら盛大に開け始め…………――そして、思い切りぶちまけた。
《これが本当の落とし玉じゃあーいっ!!》
《落とし玉おとしだまあ~!!》
その中身はカラーボール。先にシズルさんが持ってきてくれていた遊び道具だった。
(……いやいや、嘘教えたら駄目でしょ)
「んー?」
「……ううん。綺麗だね」
「うんっ!」
中身を全部出した結果、大部屋の三分の一がカラフルに。発注が間違ってたわけではないらしい……けれど、取り敢えずここではない一室を、今度ボール部屋にしようと思うと、あおいは小声でぼやいていた。
どこから嗅ぎ付けたのか。扉を開けると、それは雪崩れ込むように押し寄せてきた。
「ええっ? いったい何人いるの……」
正確に言うと押し寄せてきたのは十人ちょっとだったけれど、大部屋の中にはそれ以上の、年齢がバラバラの子供たちが大勢いた。
予想を遙かに上回った人数に驚きを隠せないでいたけれど、隣の彼女はというとまるでドッキリが大成功したような、そんな楽しそうな笑顔を浮かべていた。
そのまま彼女は、小さく咳払いをして話し始める。
《皆さん、お行儀が悪いですよ》
《はーい、ごめんなさいシスター》
(し、シスター……)
《今日はお客様がいらっしゃいます。皆さん、ご挨拶は?》
《こんにちはー!》
「えっと。……Good afternoon」
いろいろ突っ込みどころは満載だったけれど、ひとまずはそのキラキラした幼い視線に、戸惑いながらも返事をしてみる。不安げに隣へ視線を送ってみると、小さく微笑みと頷きが返ってきた。どうやら合っていたらしい。
安堵の息を洩らしているのも束の間、何の合図もなく続けて彼女はマイペースに大きく手を広げやがった。
「ア~ンド! ア、ハッピーニューイヤー!!!!」
「あ、はっぴーにゅーいやー!!」
「う、わあ……っ!」
もう待ちきれなかったのだろう。初めから、うずうずしていたのは何となく気付いてたし。
新年の挨拶とともに再び飛び付いてきた子どもたち。それはもう、オレにも容赦なかった。
「だっこおー!!」
「ん? オレ?」
彼女でなくていいのか。おねだりしてくる子どもに聞き返してみるけれど、「うんうん!」と言いながらオレの返事も待たずよじ登ろうとしていた。
高いところに登りたいのか。隣の小さな彼女の方をちらりと確認してから、その子をゆっくりと持ち上げる。
「ごめんね、ヒナタくん」
けれど、彼女はそのオレの視線を少し勘違いしていたらしい。早速、人が多いところに連れてきてしまったと、不安になっているようだった。
子どもを抱え直し、そんな心配性の彼女にぎこちなく笑いながら、一度ゆっくり首を振った。子どもなら問題ない。寧ろ最近子どもが可愛く思えてこれでもちょっとはしゃいでいたりするのだ。あんまり言うと、彼女の反応が今後恐ろしいことになりかねないので、敢えて言わないでおくけど。
そんなオレの様子に、彼女も安心したのだろう。だったらと、次は先程一緒に持ってきた段ボール箱を、バリバリ音を上げながら盛大に開け始め…………――そして、思い切りぶちまけた。
《これが本当の落とし玉じゃあーいっ!!》
《落とし玉おとしだまあ~!!》
その中身はカラーボール。先にシズルさんが持ってきてくれていた遊び道具だった。
(……いやいや、嘘教えたら駄目でしょ)
「んー?」
「……ううん。綺麗だね」
「うんっ!」
中身を全部出した結果、大部屋の三分の一がカラフルに。発注が間違ってたわけではないらしい……けれど、取り敢えずここではない一室を、今度ボール部屋にしようと思うと、あおいは小声でぼやいていた。



