少しだけ震えた手に、彼は気付かない振りをしてくれた。
「わたしが知ってること。モミジさんが隠してたこと。ヒナタくんが突き止めてくれたこと。そして、警察が調べたこと。それの確認」
「……それ、する必要ある?」
「なかったらしてないよー」
「違う、あおいが」
ほら。やっぱりそういうとこにも気付くよね。手だって、いつの間にか震えないように強く握ってくれてるし。
「……ほら。だってわたし、なんだかんだで首謀者じゃない?」
「何がしたいの」
「何が……って」
「自分がしたいって言い出した理由。ちゃんとあるんでしょ」
……なんで。なんでそんなところまでわかるんだろう。
「……願いをね、叶えてあげたいの」
「願い?」
「うん。アザミさんたちの」
「…………」
わかって、くれるんだろう。
「いいんじゃない。願い、叶えてあげなよ」
「……ひなたくん」
「何か手伝えることあったら、いつでも手伝うよ。オレも無関係じゃないからね」
「……うん。ありがとう」
繋いだ手が、くいっと少し引っ張られる。傾いた体を、受け止めてくれる。頭に、顎が乗っかった。
「頑張れ」
「……はは。うんっ」
脳天から響く声が、泣きそうなくらいやさしかった。
「あ、でもこれも個人的な仕事だから、また請け負ってる仕事とは別なんだけど」
「もう何となくわかってるけど」
「え?」
「いやいや、よく考えてもみてよ。ていうか今オレが持ってるのは何さ」
「おもちゃ」
「それからさっきあの人が持って行ったもの。それは、その仕事に必要な物なんでしょ?」
「う、うん」
「さすがにここまでくればもうわかるよ。まあ、予想の範囲内だったかって言ったら、ちょっと違ったけど」
「……ねえヒナタくん」
「ん?」
繋いでいた手をするりと外すと、あっという間に冷たい空気に彼の熱を奪われる。
それは向こうも同じなのか。彼の表情は少しだけ、ほんの少しだけ、強張って見えた。
「さっき、何て言ったか覚えてるかな」
「……さっきって」
「あのおもちゃ屋さんのこと」
「ああ、知る人ぞ知るってやつ?」
「そうそう!」
「あれじゃないの。保育とか、教育の関係者」
「あ、すごい! じゃあ、あともう一つは何でしょう?」
「あと一つ? あとひとつ、って……」
正解は、……ごく一部の警察関係者。



