すべての花へそして君へ③


 少しだけ震えた手に、彼は気付かない振りをしてくれた。


「わたしが知ってること。モミジさんが隠してたこと。ヒナタくんが突き止めてくれたこと。そして、警察が調べたこと。それの確認」

「……それ、する必要ある?」

「なかったらしてないよー」

「違う、あおいが」


 ほら。やっぱりそういうとこにも気付くよね。手だって、いつの間にか震えないように強く握ってくれてるし。


「……ほら。だってわたし、なんだかんだで首謀者じゃない?」

「何がしたいの」

「何が……って」

「自分がしたいって言い出した理由。ちゃんとあるんでしょ」


 ……なんで。なんでそんなところまでわかるんだろう。


「……願いをね、叶えてあげたいの」

「願い?」

「うん。アザミさんたちの」

「…………」


 わかって、くれるんだろう。


「いいんじゃない。願い、叶えてあげなよ」

「……ひなたくん」

「何か手伝えることあったら、いつでも手伝うよ。オレも無関係じゃないからね」

「……うん。ありがとう」


 繋いだ手が、くいっと少し引っ張られる。傾いた体を、受け止めてくれる。頭に、顎が乗っかった。


「頑張れ」

「……はは。うんっ」


 脳天から響く声が、泣きそうなくらいやさしかった。


「あ、でもこれも個人的な仕事だから、また請け負ってる仕事とは別なんだけど」

「もう何となくわかってるけど」

「え?」

「いやいや、よく考えてもみてよ。ていうか今オレが持ってるのは何さ」

「おもちゃ」

「それからさっきあの人が持って行ったもの。それは、その仕事に必要な物なんでしょ?」

「う、うん」

「さすがにここまでくればもうわかるよ。まあ、予想の範囲内だったかって言ったら、ちょっと違ったけど」

「……ねえヒナタくん」

「ん?」


 繋いでいた手をするりと外すと、あっという間に冷たい空気に彼の熱を奪われる。
 それは向こうも同じなのか。彼の表情は少しだけ、ほんの少しだけ、強張って見えた。


「さっき、何て言ったか覚えてるかな」

「……さっきって」

「あのおもちゃ屋さんのこと」

「ああ、知る人ぞ知るってやつ?」

「そうそう!」

「あれじゃないの。保育とか、教育の関係者」

「あ、すごい! じゃあ、あともう一つは何でしょう?」

「あと一つ? あとひとつ、って……」


 正解は、……ごく一部の警察関係者。