そんなこんなで、すっかりヒナタくんが拗ねに拗ねまくってしまっていた頃。ようやくおもちゃの準備が整ったらしい。お待たせしてしまって申し訳ありませんと、エプロン姿の女性が二人、奥から姿を現す。
「いえいえ! 新年早々ご無理を承知でお願いしたのはこちらですので」
「ありがとうございます。お品物はこちらでお間違えないですか?」
「よろしければ包装させていただきますね」
「はい! よろしくお願いします!」
「何買ったの?」
「あ、元気になった?」
「何買ったの」
二回も訊かれたので、これ以上はいじらないでおこう。
「木製のおもちゃだよ。積み木とか叩いたら音が鳴る楽器とか、お人形とかジグソーパズルとか」
「あの人がさっき持って行ってたのも?」
「あっちは文房具と教材。それから大きい段ボールにはカラーボールがたくさん入ってたんだよ。だからその分大きさはあるけど、たいした重さじゃないんだ」
「ふーん」
「だからね? こっちはちょっと重いから、男手が欲しかったりするの」
「いらないんじゃなかったっけ」
「大変だヒナタくん! わたし手が二本しかない!」
「大抵の人間は二本しかないよ」
「でも紙袋が二つになっちゃったよ! どうしよう!」
「どうもしないよね、二本あれば万事解決だよね」
「だって片っぽはヒナタくんと手繋がないといけないんだもん!」
「…………」
「あ。ヒナタくんも手が二本あるんだね! 奇遇だね!」
「あーはいはい」
大きなため息を吐きながらやれやれと肩を竦めた彼は、紙袋を二つとも持ってさっさとお店を出てしまった。
違うよー! そういう意味で言ったんじゃないよー!
「仲が宜しいんですね」と言う店員さんに「そうなんですよー照れ屋さんでいつも困ってるんですグヘヘ」と笑いながら無事お会計を済ませ、慌ててお店を飛び出した。
「ん」
「一個持つよ?」
「大丈夫」
「でも、結構重いでしょ」
「うん。だから、その時は遠慮なく頼む」
「あはっ。了解しやした!」
差し出された手は、遠慮なくぎゅっと握らせてもらった。
「……調書を取ってたんだ。道明寺の事件のこと」



