すべての花へそして君へ③


 そんなこんなで、すっかりヒナタくんが拗ねに拗ねまくってしまっていた頃。ようやくおもちゃの準備が整ったらしい。お待たせしてしまって申し訳ありませんと、エプロン姿の女性が二人、奥から姿を現す。


「いえいえ! 新年早々ご無理を承知でお願いしたのはこちらですので」

「ありがとうございます。お品物はこちらでお間違えないですか?」

「よろしければ包装させていただきますね」

「はい! よろしくお願いします!」

「何買ったの?」

「あ、元気になった?」

「何買ったの」


 二回も訊かれたので、これ以上はいじらないでおこう。


「木製のおもちゃだよ。積み木とか叩いたら音が鳴る楽器とか、お人形とかジグソーパズルとか」

「あの人がさっき持って行ってたのも?」

「あっちは文房具と教材。それから大きい段ボールにはカラーボールがたくさん入ってたんだよ。だからその分大きさはあるけど、たいした重さじゃないんだ」

「ふーん」

「だからね? こっちはちょっと重いから、男手が欲しかったりするの」

「いらないんじゃなかったっけ」

「大変だヒナタくん! わたし手が二本しかない!」

「大抵の人間は二本しかないよ」

「でも紙袋が二つになっちゃったよ! どうしよう!」

「どうもしないよね、二本あれば万事解決だよね」

「だって片っぽはヒナタくんと手繋がないといけないんだもん!」

「…………」

「あ。ヒナタくんも手が二本あるんだね! 奇遇だね!」

「あーはいはい」


 大きなため息を吐きながらやれやれと肩を竦めた彼は、紙袋を二つとも持ってさっさとお店を出てしまった。
 違うよー! そういう意味で言ったんじゃないよー!

「仲が宜しいんですね」と言う店員さんに「そうなんですよー照れ屋さんでいつも困ってるんですグヘヘ」と笑いながら無事お会計を済ませ、慌ててお店を飛び出した。


「ん」

「一個持つよ?」

「大丈夫」

「でも、結構重いでしょ」

「うん。だから、その時は遠慮なく頼む」

「あはっ。了解しやした!」


 差し出された手は、遠慮なくぎゅっと握らせてもらった。


「……調書を取ってたんだ。道明寺の事件のこと」