つい先程届いたというおもちゃだけを残し、途方に暮れた彼は悲しそうな背中でお店をあとにした。
「……ねえ、減俸ってそんなになの?」
「え?」
「いや。あの人、ああ見えても一家の大黒柱でしょ? 小さい女の子二人もいるし、何かと入り用じゃん」
「ヒナタくんなんで知ってるの? もしかして会った?」
「一人だけね」
「いいなあ! わたしまだ会ったことないんだよー。うらやましい!」
「はいはい。で? 質問の答えは?」
「減俸分は奥さんの通帳にペナルティーとしてこっそり入れてるので問題なし。奥さんにももちろん報告済みだよ」
「それならいいや。心配して損した」と大きな欠伸をしたヒナタくんに、父と娘の扱いの差を思い知ったのだった。
「訊いてもいい?」
「ほい?」
残りのおもちゃの準備が整う間、店内にあるおもちゃや文房具を二人で見ていた。
バリバリバリッと、おままごとの包丁でお野菜を切っていると、隣でフライパンを律儀に振っているお父さん、何やら訊きたいことがあるご様子。
「男手って、いつもいるの」
「そんなことないよ。今日は特別荷物が多かったから」
「そのためにオレも連れてきたの」
「いやいや違うよ。正直ヒナタくんに持ってもらわなくても、わたしだけで十分運べる量だったし」
先程出て行った彼が持っていた量に、『あれのどこが?』って顔をされたけど、それについてはスルーを決め込んでおいた。
「別に、これぐらいならオレだって」
「お仕事のこと?」
「……あの人じゃないといけなかったの」
「ヒナタくん」
「いいよ別に。流石にもう、何か訳があるんだってわかって」
「だって、車運転できないでしょ?」
「……そうだけどっ?」



