なんでだよう。オタク存分に齧ったわたしが好きなんだろおー。
一回くらい一緒に行こうよー。わたし行ったことないんだよー。行ってみたいんだよー。一人じゃ確実に迷子になるんだよおおお。
耳を塞ぐ彼を掴んでぐらぐら揺らし、おねだりしてみること一分ちょい。
「人多いとこ無理。ほんと無理。マジごめん」
「はっ! そうだった!」
肝心なことを忘れていた。全くあおいちゃんってば、うっかりさんなんだから☆
「……人少なくても無理だけど」
「ええーなんでえー」
再び耳を塞ぐヒナタくんの体を、ぐらんぐらんと回すように揺らしていると、それを止めるように空から何かが降ってくる。
「(……やっと諦めたか)どうしたの?」
「ん? ……うん、これが降ってきたの」
手の平に乗っていたのは、一枚の葉。
柵に標縄。気付けば、ご神木の前にいたらしい。
「この木、何の木か知ってる?」
「ご神木なら……榊とか?」
けれど葉の形も違うし、枝にトゲがあるし木の肌も違う。
そして何より、ご神木と言うにはまだ少し心許ない。大きさで決めることじゃないけれど……でも、まだ若かいように見えた。
「昔。……ずっと昔。船から海に落ちた人がいるの。愛する人を助けるためにね、お姫様は自分の身を抛ったんだ」
「……お姫様、ね」
「うん。この木は、そのお姫様に縁のある木なんだ。この場所もそう。奈良に分社もあるんだ」
「そうなんだ」
「だから、全然罰当たりじゃないんだよ。恋する女の子を応援してくれる神様だからね」
「応援もするけど注意もすると。そういうことかなこの葉っぱは」
手の中の葉を指差す彼に、小さく肩を竦める。
「ふむ。どうやらそのようだ。巫女さんはもうしちゃいかんと」
「いや違う。それは絶対違う。どっちかっていうとそれ着てオタクな祭典に行くのが」
「仕方がないから、巫女さんの衣装は諦めてくれ。神のお告げじゃ」
「だから、絶対違うからそれは」
巫女さんについては、今度一緒にアルバイトをしに来ようということで話がまとまった。ひとまず。でもわたしはまだ諦めないぞ。待ってろ祭典……!



