それからヒナタくん。逐一楽しそうにその夢の話をしてくれて、わたしも聞いていて嬉しい気分に。
「あ、そういえば夢の中のあおい怪我したんだよね」
「え? 何でまた」
「それがさ、ものすごい鈍くさい理由で。その悪い影と戦って帰ってきたかと思ったら肩押さえててさ。何て言ったと思う?」
「え? う、うーんと……」
「必殺技失敗しただってさ。夢のあおいには申し訳ないけど、確かにちょっとダサかった」
「…………」
「……どうしたの。肩押さえて」
「え。あ、ああいや。これは……別に」
「……」
「……な、なんでもないから」
「何でもないなら言えるよね。それともここで服引っぺがされたいの」
「い、言います言います」
ちょいとお耳を拝借。
「ごにょごにょごにょ」
「……夜、トイレに行こうと思って」
「ごにょごにょごにょ……」
「……部屋から出て階段下りてたら」
「……ごにょ」
「最後の一段踏み外して、半分寝惚けてたから受け身取るのが遅れて肩強打しただあ?」
「いっ、今はもう治ってるから! 昨日さんざん見たでしょう!?」
「鈍くささは同レベルだな」
痛い。なんかいろいろグサグサ刺さる。
「まあでも、夢の中のあおいは銃弾華麗に避けるくらいだし、まだ向こうの方が鈍くさくはないかもね」
「だったらわたし、銃弾だけじゃなくてミサイルも取れるようになってみせるよ!」
「取らなくていい」
「そしてもう、鈍くさいとは言わせないのであるっ」
「だから、取らなくていいって」
「ヤダ取るー!」
やーやーと言い合いながら最寄り駅からしばらく歩いて。ようやく、目的の場所へと到着した。
「無人駅だったから、何となくそうかなって思ってたけど……」
そこは、小さな小さな寂れた神社。人里を離れ、鬱蒼とした木々の中に埋もれているような、自然の中のお社。寂れてはいるが、境内の中はきちんと清掃されており、参拝客も少ないがいる。厳かで、とても清らかだった。
「ここじゃないといけなかったの?」
「そういうことでもないけど……でも折角だし、それに人が少ないところの方が、すぐに御参りできるでしょう?」
「それ、神様侮辱してない?」
「してないしてない。寧ろ有難いなーって思ってる」
怪訝な表情のヒナタくんに見て見ぬ振りを決めてから、二拝二拍手一拝。
「ちゃんと自分の住所と名前言ってからお願い事した? でないと神様迷子になっちゃうよ?」
「あんたほどじゃないと思うけど(……あれ。でもここには迷わず来られた……よね)」



