すべての花へそして君へ③


 それからヒナタくん。逐一楽しそうにその夢の話をしてくれて、わたしも聞いていて嬉しい気分に。


「あ、そういえば夢の中のあおい怪我したんだよね」

「え? 何でまた」

「それがさ、ものすごい鈍くさい理由で。その悪い影と戦って帰ってきたかと思ったら肩押さえててさ。何て言ったと思う?」

「え? う、うーんと……」

「必殺技失敗しただってさ。夢のあおいには申し訳ないけど、確かにちょっとダサかった」

「…………」

「……どうしたの。肩押さえて」

「え。あ、ああいや。これは……別に」

「……」

「……な、なんでもないから」

「何でもないなら言えるよね。それともここで服引っぺがされたいの」

「い、言います言います」


 ちょいとお耳を拝借。


「ごにょごにょごにょ」

「……夜、トイレに行こうと思って」

「ごにょごにょごにょ……」

「……部屋から出て階段下りてたら」

「……ごにょ」

「最後の一段踏み外して、半分寝惚けてたから受け身取るのが遅れて肩強打しただあ?」

「いっ、今はもう治ってるから! 昨日さんざん見たでしょう!?」

「鈍くささは同レベルだな」


 痛い。なんかいろいろグサグサ刺さる。


「まあでも、夢の中のあおいは銃弾華麗に避けるくらいだし、まだ向こうの方が鈍くさくはないかもね」

「だったらわたし、銃弾だけじゃなくてミサイルも取れるようになってみせるよ!」

「取らなくていい」

「そしてもう、鈍くさいとは言わせないのであるっ」

「だから、取らなくていいって」

「ヤダ取るー!」


 やーやーと言い合いながら最寄り駅からしばらく歩いて。ようやく、目的の場所へと到着した。


「無人駅だったから、何となくそうかなって思ってたけど……」


 そこは、小さな小さな寂れた神社。人里を離れ、鬱蒼とした木々の中に埋もれているような、自然の中のお社。寂れてはいるが、境内の中はきちんと清掃されており、参拝客も少ないがいる。厳かで、とても清らかだった。


「ここじゃないといけなかったの?」

「そういうことでもないけど……でも折角だし、それに人が少ないところの方が、すぐに御参りできるでしょう?」

「それ、神様侮辱してない?」

「してないしてない。寧ろ有難いなーって思ってる」


 怪訝な表情のヒナタくんに見て見ぬ振りを決めてから、二拝二拍手一拝。


「ちゃんと自分の住所と名前言ってからお願い事した? でないと神様迷子になっちゃうよ?」

「あんたほどじゃないと思うけど(……あれ。でもここには迷わず来られた……よね)」