「ヒナタくんコーヒー飲む~?」

「うんもらうー」


 朝ご飯はお昼と一緒に外で食べることにしたけれど、それでも少しお腹に入れておいた方がいいだろう。家に残っている使えそうなもので簡単な朝食作り。
 ほぼおつまみだからな。あんまりできなかったけど、クラッカーと、あとチーズとジャムが残っていたので、夕べのパーティーの真似をしてちょっとしたカナッペを作ってみた。


「はいコーヒー。あと軽食ね」

「んー」


 興味の引く記事があったのか。返事半ばに、ヒナタくんはテーブルの上に年末の新聞を広げ、食い入るようにいろんな記事へと視線を移していた。さ迷う手にカップを握らせてあげると、内容はちゃんと聞こえていたらしく素直にコーヒーを飲んでいた。
 その近くに軽食の乗ったお皿を寄せてあげて、わたしはソファーの方へと移動することに。


『――新年、明けましておめでとうございます。今日の記念すべきゲストは、アイドルグループの――』

『――のお二人ありがとうございました! 続いては、過去二回グランプリ受賞のあのコンビです! それでは――』

『――ただいま、皐ヶ丘広場に来ております! 今日はこちらで凧揚げの世界大会があるということで、会場は朝からものすごい熱気に包まれ、選手たちは今か今かとその時を――』


 たっぷりミルクの入ったカフェオレを膝に抱えながら、テレビのチャンネルをいろいろ回してみるけれど、どれも年明け用の番組ばかりだ。
 ま、当たり前だけど。めでたいことは、世界を明るくさせるからね。じゃんじゃんやっちゃって~。そして舞い込め福の神――


『速報です。ただ今――――……』

「……そういえばさ」

「んー?」


 あまり面白い番組をしていなかったので、アニメチャンネルに変えながら疑問に思ったことを呟いてみる。


「やっぱりさ、違うもんなのかな」

「ん? 何が?」

「服の上からと、直接触るの」

「ブフゥーッッ!!!!」


 振り向いたら茶色い噴水が家の中で発生していた。
 慌ててぞうきんその他を持って駆け寄ってみると、新聞はお陀仏になっていた。よし、もうこのまま捨ててしまおう。


「……いきなり何」


 まだ途中だったのだろう。いろんな文句が混ざって、ちょっと怒っておられる。


「何か。あんたはオレに、服の上からと直接と、その違いを力説しろというのか。やってやろうじゃん」