肌寒さに、重い瞼がゆっくりと上がっていく。
 ……まだ眠たい。まだ寝ていたい。ベッドの上でそんな風に思うのは、一体いつ振りになるだろう。


(……あ、れ。あおいは……)


 彼女を腕の中に抱き締めたまま、眠りについたせいか。今日は、恐ろしく変な夢を見た。あれが願望……本望なのだろうか、オレの。……考えるだけで身の毛がよだつな。

 でも今はそんなことよりも、現実のあおいだ。まさか、今までのこと全部夢だったなんて落ち――。


「……何してんの」

「……!? ひ、ひなたくん。いつから起きて……」

「つい今し方」

「さ、左様で御座いますか……」

「で」

「い、いえ、その。ちゃちゃっとお着替えしておこうかなーなんて……」

「それは見てわかる」

「……すみません起き抜け早々にお目汚しを」


 ブラにパンツにキャミソール姿で、どうやったら目が汚れるのか教えて欲しいものだ。
 もし寝る前までのことが全部夢だったとしても、今目の前にいる彼女はどうか、是非とも、現実であれ。


「お、落ち着くんだヒナタくん。今は朝だぞ」

「誘ってきたのはあおいじゃん。朝から積極的だね」

「だから、別に何もないんだってば。ただ着替えてただけで」

「わざわざここで? 脱衣所じゃなくて。オレの寝てる横で? いつ起きるかわからないのに」

「……すぐ起きるとは思わなかったんだよ。気持ちよさそうに寝てたから」

「じゃあ期待はゼロだったんだ」

「……全くなかったかって言われたら、そうでもないかもしれない」

「嫌ならしないよ」

「……嫌なわけないよ」

「それはよかった」


 組み敷いた彼女の髪をほぐすように掬うと、同じシャンプーのはずなのに僅かに女っぽい甘い匂い。首筋へ顔を埋めると、くすぐったかったのか小さく抗議するような声を上げながら身を捩る。それに聞こえぬ振りをして、上から撫でていた手を、そっと潜り込ませると、彼女の体は大きくびくつき、声に甘さを増した。


「ち、……ちょっとひなたくん」

「ん?」

「……どこまでする気なの」

「それはもちろん、最後まででしょ」