すべての花へそして君へ③

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 その後、ようやく日向から解放された翼はというと、ホテルの一室に戻って早々、ソファーにもたれながら天井を仰いでいた。


(あいつら、別れたとかじゃなくてただの痴話喧嘩じゃねえか……)


 今日は何回幸せが逃げていっただろうかと、再び大きなため息をつきながら、丸テーブルの上に置いてあるスマホに目をやる。
 そして今一度ため息交じりに、スマホ画面を開いた。


┌                  ┐

 うん! 
 その日は元々別の予定が入ってたから
 夕方からなら空いてるよ~♫
 楽しみにしてるね☆

└                  ┘


「これは、絶対黙っておいた方がいいんだろうな」


 つーかこいつ、本当にマジギレしてんじゃんと。翼は、どうしたもんかと暫く……


「翼? 帰ってきたのか」

「……ああ」

「……どうした。マカロン食べるか? エクレアもあるぞ」

「いや俺は……、やっぱもらうわ」

「……エスプレッソ、淹れてもらうか」

「今は甘いカフェオレが飲みたい気分」

「甘いものの食べ過ぎは体に毒だぞ」

「アキにだけは言われたくねえ」


 というか付いてきた修学旅行の間中、誰にも相談できることなく一人で頭を抱えていたのだった。