流石にもう痺れを切らしたのか、影が突如発砲。それを華麗に避けた彼女と、たちまち戦闘になる。
隙を見てそこから脱出したオレは、三人を壁の陰に隠し、大きく息を吐く。
『あおいちゃんを、一人にさせておいていいのかい』
夢の中の道明寺薊が、不安そうな声を上げる。
『あなたなら何とかできるんじゃないの』
死ぬ気で守りなさい、と怒気を強める白木院エリカは僅かに手を震わせていた。
『助けないと、彼女を。私たちは何度も救われたんだ』
必死に訴える乾実栗の眼鏡は割れ、服は破れ、そして体は傷だらけだ。あんたも、命を懸けてくれたんだな。
「大丈夫ですよ。それに、丸腰のオレらにはあいつらの間に入ってどうこうできる術はありませんし」
ここは気長に、決着が付くのを待っていましょうと。何故か内ポケットの中に入っていた煙草を、彼らに差し出し、オレも一服をすることにした。
『……強いんだな、君は』
「え?」
『あの時もそうだった。呪いから、彼女を救い出した時も』
「……そんなことないですよ」
オレは――……弱い。強くなんてない。
どれだけ今まで、いろんな人に迷惑をかけたか。あおいを、不安にさせてきたか。泣かせてきたか。
「でも、信じてますから」
『……信じる?』
「あいつは、オレが信じれば信じるだけ強くなる。信じていれば、必ず、何が何でもオレの元に帰ってきてくれる。オレを笑顔にしてくれる」
『……』
「ただ、それだけでいいんです。だからあんたたちもただ、信じて待っててやってください。そしたら、あっという間に帰ってきますからあいつ」
『……そうか』
ある日目が覚めたら、あおいがどこにもいなかった。
捜していたら、いつの間にか目の前に小さな背中があった。
気付いたら、オレの腕の中でぐったりしていた。
真っ赤な血溜まりつくって、掠れた声でオレを呼んでいた。
『くらええ! 必殺っ、四の字固めレボリューション!!』
(何だよそのネーミングの悪さ。まだ現実のあおいの方がちゃんとしたやつ付けるよ。て言っても、どっちもどっちか)
きっともう、苦しい夢は見ないだろう。
きっともう、涙を流すことはないだろう。
もう、いなくなった彼女の姿を、捜すことはないだろう。
『いやー、ただいまただいま!』
「はい、お疲れ様。……何、肩押さえて。まさかやられたの」
『あはは。これがまた、災難なことに新必殺技を試そうとしてさ』
「……」
『着地に失敗しました。無念』
「んなこったろうと思った」
その新必殺技とやらは、しばらくの間は封印だな。



