“――でも、やっぱり一番の理由は、ヒナタくんが絶対に二人でいることを選んでくれるから。わたしがそう信じてるんだ”
【……強いて言うなら、あいつがお前にべた惚れしてる理由】
“どんな状況になったとしても、わたしは、絶対に君を一人にはしない。何があってもわたしがそんなもの撥ね除けてあげるから”
……だから。
『だからわたしは、ヒナタくんを絶対に一人になんてしない』
「あおい……」
いつしか開いていた両方の目が、真っ直ぐにオレの瞳を見上げてくる。いや、睨んでいると言ってもいいかもしれない。
そんな彼女の、血がべっとりとついた手をぎゅっと握り締めると、今まで怖かったのが嘘みたいに、馬鹿馬鹿しくなってきた。
――……ガチャン。
「…………」
気付けばその影は、オレたちの前に立っていた。
――別れは済んだか。
そう言いたげに、異様に不気味に影が揺れる。そして、拳銃を今度はオレの額に向けた。
「生憎、別れの挨拶は『またね』って決まってるんですよね、オレたちの間では」
――それでは、仲良く二人であの世に行くといい。
引き金を引く。きっとこの影は、ためらいもなく。けれど、全くと言っていいほど怖くはないのは――――
『でえりゃああああ!!』
彼女が、きっと何とかしてくれるって。本能でわかっているからなんだろう。
『遅れ馳せながら! ただいま参上仕るは、黄泉の国から再び舞い降りた、天に向かいし伸び行く花。月の申し子と呼ばれた者、そして朝の光に愛されしこの誇り高き日本国を背負う者。彼の者達の血を継ぎし幼子は、嘗て呪いの娘と呼ばれ、この世界に未遂の恐怖を撒き散らせた。しかし! 解かれた呪いに誓いを立てん少女は、この世界のため、そして愛する人のため、悪と戦うことを――ぐはっ』
「長い」
『ま、まだわたしの自己紹介できてないのに……』
「くどい」
『だ、だからって蹴ることないのに』
「さっさとして」
『ち、調子戻ったようでなにより……』
律儀にこの長い自己紹介に付き合っていた影だったが、こいつが死んでいないと、生きているとわかると、どこか焦ったようにその纏う影を揺らす。
「オレとの約束、覚えてるんだよね」
『もちろん! わたしが忘れるわけないでしょう?』
“オレが、寂しさを本気で我慢できなくなる前に、そういうこととはさっさと決着を付けてください”
『ヒナタくんが泣いちゃう前に、ささっと片付けるとしますか』
「……いや、泣かないから」
『え? だってさっき、泣いてたじゃん』
「あれは……ほら、迫真の演技だったでしょ」
『そういうことにしといてあげる。帰ったら何食べたいか考えといてね』
「じゃああおいにする」
『ヒナタくん、そこは空気読もうよ』
「あんたにだけは言われたくないよ」



