「眠くなった?」
「うん。安心したら急に来た」
お互いの言いたかった思いとか、伝えたかったことは十分に話せた。残すところと言えば、あとはわたしの詳しい仕事内容についてくらいだ。
今日はきっと、今までで一番疲れただろうから。だから、ゆっくり休もう。次にわたしたちに必要なのは、きっと休息だ。
「眠くなることって、この半年あんまりなくて」
「ふふ。電車の中では寝てたけど」
「だから、やっと戻ってきたんだなって。オレの日常」
「…………」
その中心にはわたしがいる。もちろんわたしの日常にも君がいる。
だから……帰ってこられた。
「もし怖い夢見たら、起こしていいからね?」
「……子供扱い。男のプライド以前の問題になった」
「気にしなくていいのに。でも本当に無理しないでいいから」
「……ありがと。でも、多分大丈夫だと思う」
「そう?」
「うん。なんとなくだけど」
根拠はないけど、確証はある。いや、予感かな。
感覚的なところならわたしの得意分野だ。ヒナタくんが言うんなら、わたしもそうだと思う。
「いい夢見ろよ? どうせならわたしの夢!」
「いやでも見ると思うよ」
「わたしも素敵な夢が見られるといいな」
「……あんたも、どうせ見るならオレの」
「これから見るのが初夢になるのかな? それとも今晩? でも見るなら一富士二鷹三茄子見たいよねー!」
「………………」
「ん? どうしたのヒナタくん」
「オレのことおちょくってるでしょ」
「あはっ。そんなことないけど、明けましておめでとう。今年もどうぞよろしくね」
「取って付けたような新年の挨拶」
「お、怒んないでよ」
「しみじみとしてただけだよ」
「あーそうだね。本当に半年、あっという間だったね」
「さめざめの間違いかも」
「な、泣かないで」
「冗談冗談」
可笑しそうに笑ったヒナタくんが、すっと腕を伸ばしてくる。これはどうやら、腕枕なるものをしてくれるようだ。……失礼します。
「明けまして、おめでとうあおい」
「おめでとう。ヒナタくんっ」
「今日も、まだいられるの」
「うんっ。一緒に初詣行く?」
「うん行く。……いられるまで、いる」
「ヒナタくん……」
目蓋が降りていく彼の頬を、そっと撫でる。
「言ったでしょ? いるよ。ずっと一緒にいるよ」
「……うん」
「今日は多分ね、本当にいい夢見られると思うんだ」
「うん」
「だから……『また明日』ね。あ、いやもう今日か。起きたらおはようって言おう」
「……ん」
「これからいっぱい、言おうね」
「…………」
あの時言えなかった、次の約束も。
「……おやすみなさい、ヒナタくん」
そして、おはようも。この近い距離で。



