すべての花へそして君へ③


“チョキはね、二本の指なら何でもいいんだよ! 二本の指で、相手の顔にイタズラするの”



「チョキは、正直目潰し覚悟してたからね」

「だからしないってば、そんなこと」


 喧嘩する時は、多分どちらも悪いと思うの。わたしたちの場合は特に。
 だから、チョキは戒め。相手にじゃなくて、自分自身に。


「じゃあオレは、……抓もうかな」

「何なりと好きなところを抓むなり捻るなりしてくれ!」


 そう言うからには、ほっぺただろう。いや、鼻という手もあるか。どちらにしてもそれ相当の痛みを覚悟していた。
 だから、意を決して目をつぶって待ち構えていたというのに、衝撃が唇に来たときは、それはそれは驚いた。


「ん。……え?」


 というかキスされた。ある意味衝撃だけど。衝撃なんてもんじゃないけど。


「つい」

「……びっくりした」

「じゃあ抓むね」

「んんっ!?」


 しかも唇抓むの? 完璧予想外だったわ。


「ひとつ言っておくと」

「ん?」

「やっぱり喧嘩の原因はオレにあると思う」

「……ん」

「オレが女々しいから。性格ひん曲がってるから。面倒くさいから、ここまで長引かせた」

「んーん!」


 ああ。だから彼は唇を抓んだんだ。わたしに、何も言わせないために。


「ああ、もう大丈夫だから。いや、根本は変わらないかも知れないけど」

「…………」

「怒った? でもこれがオレの本音だし、整理付くまで迷惑かけたと思ってるから。だから、これはこれで受け止めといて? オレの戒め」

(……ひなたくん)

「長引かせるのはもうやめようね。それなら殴られた方がなんぼもいいから」

(そうだね)


 大きく頷くと、嬉しそうに笑って彼は唇から指を離した。


「あと誓って」

「ん? はい」

「誰にも触れさせないで。ここは特に。じゃないとすぐ喧嘩の原因になる」

「ははっ。はい! 承りました」


 続けてわたしもVサインで、ヒナタくんの顔を攻撃。ぶすっと突き刺したのは、口の両端。


「誓いましょう? いつでもヒナタくんのこと、笑顔にさせてあげるから」

「ん。……それは、どうも」

「覚悟しとけよ?」

「ふはっ。楽しみにはしておくよ」