“チョキはね、二本の指なら何でもいいんだよ! 二本の指で、相手の顔にイタズラするの”
「チョキは、正直目潰し覚悟してたからね」
「だからしないってば、そんなこと」
喧嘩する時は、多分どちらも悪いと思うの。わたしたちの場合は特に。
だから、チョキは戒め。相手にじゃなくて、自分自身に。
「じゃあオレは、……抓もうかな」
「何なりと好きなところを抓むなり捻るなりしてくれ!」
そう言うからには、ほっぺただろう。いや、鼻という手もあるか。どちらにしてもそれ相当の痛みを覚悟していた。
だから、意を決して目をつぶって待ち構えていたというのに、衝撃が唇に来たときは、それはそれは驚いた。
「ん。……え?」
というかキスされた。ある意味衝撃だけど。衝撃なんてもんじゃないけど。
「つい」
「……びっくりした」
「じゃあ抓むね」
「んんっ!?」
しかも唇抓むの? 完璧予想外だったわ。
「ひとつ言っておくと」
「ん?」
「やっぱり喧嘩の原因はオレにあると思う」
「……ん」
「オレが女々しいから。性格ひん曲がってるから。面倒くさいから、ここまで長引かせた」
「んーん!」
ああ。だから彼は唇を抓んだんだ。わたしに、何も言わせないために。
「ああ、もう大丈夫だから。いや、根本は変わらないかも知れないけど」
「…………」
「怒った? でもこれがオレの本音だし、整理付くまで迷惑かけたと思ってるから。だから、これはこれで受け止めといて? オレの戒め」
(……ひなたくん)
「長引かせるのはもうやめようね。それなら殴られた方がなんぼもいいから」
(そうだね)
大きく頷くと、嬉しそうに笑って彼は唇から指を離した。
「あと誓って」
「ん? はい」
「誰にも触れさせないで。ここは特に。じゃないとすぐ喧嘩の原因になる」
「ははっ。はい! 承りました」
続けてわたしもVサインで、ヒナタくんの顔を攻撃。ぶすっと突き刺したのは、口の両端。
「誓いましょう? いつでもヒナタくんのこと、笑顔にさせてあげるから」
「ん。……それは、どうも」
「覚悟しとけよ?」
「ふはっ。楽しみにはしておくよ」



