我ながらなんて理由だろうか。こんな回答で納得してもらえるわけがない。
いやでもそれがわかってしまって、気付けば自嘲するように笑っていた。
「……そうか」
だから、まさか納得されるとは思っていなかったので拍子抜け。
隣を通り過ぎていくツバサを、慌てて追い掛けた。
「いや、わかるなと思ったよ」
「おお。さすがツバサ」
「正直、何やらしても俺らよりあいつの方が上だろうし」
「だよねだよね」
「やっぱ兄弟なんだろうな」
「だねーそうだねー」
横に並ぶと、やっぱり大きかった。身長ももちろんだけれど、兄貴だからか。大きく見えた。
そんなことを考えていたオレの頭を、ツバサはくしゃっと雑に撫でていった。
「だから俺は、お前の“見栄”がわかるんだろうな」
それが嘘ではなくても、それに隠した理由があること。それを訊かずにいてくれること。言わずにいてくれること。
あいつが、兄貴を頼りにした気持ちが、本当によくわかる。
「やっぱすげーね! 兄ちゃんはっ」
「抱きつかなくていいから、お前はさっさと葵に謝ってこい」
「は。なんで」
「全面的にお前が悪いからだ。アイも言ってただろ。ちゃんと話をしろ」
「異議あり。オレはすぐに謝ろうとしましたー。でも全然連絡が取れないのは向こうのせいだしー」
「はあ。葵が今頑張ってるのは? 誰と一緒にいたいからだ。それくらい辛抱強く何回もかけてみ――」
「その日に100回以上かけましたけど」
「……辛抱強く、待ってみろ。あいつがお前から電話もらってて、折り返さないはずないだろ」
「わかんないよ。だってあいつ、けっこうぶち切れてると思うから」
「だから、それはお前の別れよう発言が原因なわけで」
「オレだって怒ってるんだよ。さんざんオレを苦しめたくせに全部知ってたとか何。電話も寄越さないし。何で誰もオレのこと支持してくれないの!」
「お前が全面的に悪いから」
「酷い! ツバサのバカ! もう絶対欲しいって言ってもあいつのブロマイドやらないから!」
「いらねえよ。つうか作んな」
「頼むから、さっさとお前ら仲直りしろよ」と。ツバサはただただオレの文句に、大きなため息を何度も零していたけれど。
なんだかんだ、オレが満足するまで付き合ってくれたのだった。持つべきものは、兄貴だな、うん。



