彼は額にそっとキスを落とし、ふっと微笑んだ。
「だから、オレが寂しさを本気で我慢できなくなる前に、そういうこととはさっさと決着を付けてください」
「へ?」
「それか、度々充電しよ。今回わかったけど、半年とかもう無理。マジ泣きそうだった」
「……」
あ、甘えてくれてる。ヒナタくんが。我が儘言ってくれてる。……わあ。
「……わ。かっ、た……」
どうしよう。すごい嬉しい。
「オレはオレでさ、できること考えたんだよ。どうやったらあおいの役に立てるか、そばにいられるか」
「……うん」
「なのに、あおいみたいになりたいとか言ったら一蹴されるし」
「け、っ蹴ってないよ! 断じて!」
「嘘ばっかり。ダメって言ったじゃん。やめとけって言ったじゃん、つらくなるからって」
「そ、そりゃ言うでしょうよ。ヒナタくん、ちょっと考えてもみておくれよ」
もしヒナタくんと一緒にお仕事するとしたらば。今夜みたいなパーティーに、ヒナタくんと並んでずーっとニコニコしてないといけないんだよ? いや、まあそれはいいんだけど、その腹黒いところを隠して笑ってる奴らの、腹の奥底を探らないといけないんだよ? それを、一番近くで見られるんだよ? しかも、一番好きな人に。
「じじじ、地獄じゃん! 絶対耐えらんないよ!」
「(震えるほど嫌? どんな方法で腹ん中抉ってんだろこいつ)」
つらくなるっていうのももちろん理由だ。それが、最終的に行き着くところだから。
「でもやっぱり、そんな風に思ってくれて嬉しいよ。考えてくれて、本当にありがとう」
「……あおいは、どうしたい?」
「え?」
「オレに。どうして欲しいの」
ヒナタくんめ。だからさっきあんな風に甘えたんだな。全力で我が儘言ったんだなこん畜生め。
……先に言うとか、ズルいんだから。全くもう。
「一緒にいるんだから、いつも笑顔でいたいって思う。笑顔にしたいって思うでしょう?」
何処にいても。誰といても。何をしていても。
帰ってくる場所は、ここだけ。わたしがわたしでいられる場所は、君の隣だけ。
わたしにとってヒナタくんは、お家みたいなものだから。
「ヒナタくんは、ヒナタくんのままであって欲しい」
「…………」
「わたしが、薄汚れて帰ってきたら……傷付いて帰ってきたら、そばにいて欲しい」
「…………」
「わたしを“わたし”にして欲しい。バカでアホで変態の、……ただ君を愛してる女にして」
「…………」
「だって……ほら。ヒナタくん回復魔法使えるんでしょう?」
「それ掘り返すの。マジやめてハズいから」



