すべての花へそして君へ③


 彼は額にそっとキスを落とし、ふっと微笑んだ。


「だから、オレが寂しさを本気で我慢できなくなる前に、そういうこととはさっさと決着を付けてください」

「へ?」

「それか、度々充電しよ。今回わかったけど、半年とかもう無理。マジ泣きそうだった」

「……」


 あ、甘えてくれてる。ヒナタくんが。我が儘言ってくれてる。……わあ。


「……わ。かっ、た……」


 どうしよう。すごい嬉しい。


「オレはオレでさ、できること考えたんだよ。どうやったらあおいの役に立てるか、そばにいられるか」

「……うん」

「なのに、あおいみたいになりたいとか言ったら一蹴されるし」

「け、っ蹴ってないよ! 断じて!」

「嘘ばっかり。ダメって言ったじゃん。やめとけって言ったじゃん、つらくなるからって」

「そ、そりゃ言うでしょうよ。ヒナタくん、ちょっと考えてもみておくれよ」


 もしヒナタくんと一緒にお仕事するとしたらば。今夜みたいなパーティーに、ヒナタくんと並んでずーっとニコニコしてないといけないんだよ? いや、まあそれはいいんだけど、その腹黒いところを隠して笑ってる奴らの、腹の奥底を探らないといけないんだよ? それを、一番近くで見られるんだよ? しかも、一番好きな人に。


「じじじ、地獄じゃん! 絶対耐えらんないよ!」

「(震えるほど嫌? どんな方法で腹ん中抉ってんだろこいつ)」


 つらくなるっていうのももちろん理由だ。それが、最終的に行き着くところだから。


「でもやっぱり、そんな風に思ってくれて嬉しいよ。考えてくれて、本当にありがとう」

「……あおいは、どうしたい?」

「え?」

「オレに。どうして欲しいの」


 ヒナタくんめ。だからさっきあんな風に甘えたんだな。全力で我が儘言ったんだなこん畜生め。
 ……先に言うとか、ズルいんだから。全くもう。


「一緒にいるんだから、いつも笑顔でいたいって思う。笑顔にしたいって思うでしょう?」


 何処にいても。誰といても。何をしていても。
 帰ってくる場所は、ここだけ。わたしがわたしでいられる場所は、君の隣だけ。

 わたしにとってヒナタくんは、お家みたいなものだから。


「ヒナタくんは、ヒナタくんのままであって欲しい」

「…………」

「わたしが、薄汚れて帰ってきたら……傷付いて帰ってきたら、そばにいて欲しい」

「…………」

「わたしを“わたし”にして欲しい。バカでアホで変態の、……ただ君を愛してる女にして」

「…………」

「だって……ほら。ヒナタくん回復魔法使えるんでしょう?」

「それ掘り返すの。マジやめてハズいから」